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「間違ってなかった。勘違いじゃなかった。先輩は……やっぱり、運命の人だった」
今度は、夏芽先輩に飛びついた。同じ匂いがしていたのは、家族だったから。
優しく包み込むように、そっと手が添えられる。
「十歳離れてるから、会ったことはなかったけど。小春が……俺の姉さんって、ことになるのか」
複雑そうに言葉を探しながら、夏芽先輩がつぶやく。
「今の私は小春だよ。十九年、梅野小春として生きてきた。もちろん、これからも。さくらの時の記憶も少し残ってるから、普通の人とはちょっと違うけど。夏芽先輩は、私を好きじゃなくなったの?」
そのまま見上げると、神妙だった先輩の面持ちが、フッと柔らかくなって。
「そんなわけないよ。すげえなって、逆に、嬉しい」
不安をかき消すような笑顔に、胸が熱くなる。
先輩と出逢うまで、何かを好きだとか、夢中になる気持ちがわからなかった。
お父さんもお母さんも大切だし、大好きだけど家族は別で。何か特別なものを、ずっと探していた気がする。
黙って見ていた先輩のお母さんが、私たちをギュッと抱きしめる。
「小春ちゃん、産まれてきてくれてありがとう。本当に……ありがとう。おかえりなさい」
わんわん泣く私の横で、二人まで声を震わせている。
両親が見たら、おかしな光景に思うのだろう。でもこの奇跡を話したら、きっと一緒に喜んでくれる。
和室に飾られている女の子の写真が、鏡に反射してキラリと光った。まるで、私と同じ雫を流すように。
「これからも、よろしくね。ずっと、ずっと」
end.
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