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一時間五十二分。さすがに、ずっと手を繋いでいたわけではないけど、離すタイミングがわからず。前の人がガタンと机の音を立てたとき、とっさに手を引っ込めた。
みんなは画面に釘付けで、私たちの変化に誰も気づかない。
バラバラに部室を出て、大学の外で落ち合う。それが、私たちの日課になっている。
人の少ないカフェは穴場で、二人きりでも人の目を気にしなくていい。
「あの消えるシーンで流れる挿入歌、ヤバいよね」
「映像にあってるよな。何回見ても感動する」
「夏芽先輩、涙もろいもんね」
「小春に言われたくないなぁ。ああゆう運命系に弱いでしょ」
ハハッと笑って、夏芽先輩がコーヒーを口にする。
そうだよ。よくわかってるじゃん。その感情を押し込めて、チューとレモンティーをすする。ストローを離すと、ミルキーピンクのリップ痕が残っていた。
出会ってから、ずっと確認したいことがあった。
小さく息を整えて、こっちへ向けられている瞳をグッと見つめる。
「私が、前世がわかるっていったら、どうする?」
わずかに大きくなった目が、一秒ごとに落ち着きを取り戻していく。
「あー、俺も昔やったことある。たしか、中学くらいのとき流行ったよね。なんだったかな」
「占いとかじゃなくて。真面目なやつ」
ストローをいじりながら、わざと口先を先輩側へ向ける。
もしも、覚えていないとしたら、どうしたらいいのだろう。
「私たち、前世で……出会ってるんだけど」
ドクドクと鳴る心臓の音が、何百、何千もの時間に思えた。
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