愛はいつだって君の傍

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 それは初めて聴いた話だった。目を見開く私の首筋を舐めながら、彼は続けたの。 「自分も辛い境遇なのに、あいつは俺を救ってくれて、ずっと励ましの言葉をかけ続けてくれた。ゴールデンだが、毛の色が結構白っぽいやつでなあ。なんとなく、姐さんに似てたんだ。……俺が最初、あんたに惹かれたのはあいつに似てたからなんだよ。でもって、人間より犬のが信頼できると思う理由もそれさ。特に大型犬ってやつは、俺の命の恩人だからな。でも、今姐さんと離れたくないって思うのはそれだけが理由じゃないんだぜ」  彼はぴん、としっぽを立てる。自分はこんなに幸せだと、そう示すかのように。 「信じられないかもしれねえけどよ。犬も猫も、無性の愛ってやつを注ぐことだってできるイキモノだと思うんだ。子供を作るためとか、餌を貰うためとか、そんな損得勘定じゃねえ。俺は、あの名前も知らない犬に返せなかった分まであんたに恩を返したい。そして、あんたが辛い時は傍で支えるし、楽しい時は一緒に笑ってたいんだ。なあ、あんたはどうだ?俺と、そういう毎日をこれからも過ごしたいって思わないか?」  なんて卑怯な子なのかしら。私は不覚にも泣きそうになったわ。  そんなまっすぐなキラキラした目で、そんなこと言われて――心が動かない犬がどこにいるっていうの? 「……いたいわ」  絞り出すように、あの子に返したの。 「私はこれからも、マオ……貴方とずっと一緒にいたい。でも、どうすればいいの?」  きっと。マオはその言葉を待っててくれたのね。彼は嬉しそうに喉を鳴らして私の首に擦り寄りながら、こう返してきたのよ。 「OK!なら……俺様に秘策がある。来週の一週間だけ我慢してくれ。俺は絶対、この家に帰ってくるからよ!」
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