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それで、マオはどうしたのかって?
……正直、私もおったまげたわよ。マオを連れて帰ってきた長女ったらマスクして、くしゃみを連発してるんだもの。そして、涙目になって“むり!”って叫んできたのよ。
「うううう、ま、マオはかわいいけど、むり!うちで飼うのむり!母さん、これからもマオと暮らして!!」
あの様子。何をしたのかと私が尋ねれば。マオはにんまりと笑ってこう返してきたってわけ。
「ふふふふふふ。必殺、大量抜け毛攻撃をお見舞いしてやったぜ。あの女に軽い猫アレルギーがあること、俺様だけは気づいてたからな!寝ている時毎晩のように大量に顔の上に毛を落とされてたら、そりゃくしゃみも止まらなくなるだろうよ!!」
「わお」
「それに加えて、奴の家のトイプ―に協力を要請した。俺様と犬猿の仲ってやつを演じてもらったのさ!毎日毎日、奴が家事をしてる時もテレワークしてる時も関係なく二匹でぎゃーぎゃーと喚き続けてやった。むしろよく一週間もったもんだぜ!」
「……あんた、マジですごいわ」
なんという計画性と執念。あっけにとられる私の背中に、よいしょ、と登ってくる黒猫。さっそく犬吸いをさせてくれ、というつもりらしい。
「そんなわけで、これからもよろしくな姐さん!俺様、こんなかんじでしがみついてもう離さねえからよ!」
「……しょうがないわね」
私は呆れて言う。ええ、呆れたふりをしたけど、誤魔化せてないんでしょうね。飛行機耳と揺れるしっぽは正直だもの。
「仕方ないから付き合ってあげるわよ。あんたの重たい愛を受け止められるのなんか、私しかいないんだから」
愛はいつだって君の傍。
彼との騒がしい日々は、きっとまたまだ当面続く。
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