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愛はいつだって君の傍
「ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!」
「……」
「ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!」
「…………」
「ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!ふんすふんすふんすふんすふんすふんす!」
「……あのねえ、あんたそれ、そんなに楽しいわけ?」
「おい馬鹿やめろ、俺様が落ちるじゃねえか!お前は黙って俺様のオフトゥンをやっていればいいんだよ!」
「まったくもう……」
はいどうも、私、犬のシャーリー。犬種はサモエド、性別はメス。真っ白くてデカくてモフモフな犬だと思って貰えば間違いない。……ってちょっとあんた、耳が垂れてるのは違うからね?それはグレードピレニーズ!同じ真っ白なモフモフだけど全然違うわ。ほら御覧なさい、この素敵な立ち耳を!サモエドはこの可愛い耳が特徴なの、よくぼえておくことね。
現在私がいるのは、自宅のリビング。説明すると――背中に貼りついている物体がいるせいで、伏せをした状態からまったく動けないって状態。
貼りついている物体は、何かって?
見てわからない?この小さくて真っ黒な毛並み、金色で爛々と輝く目。
そう、黒猫よ。それも、一歳に満たない保護猫。……保護された初日から異様なほど私に懐き、異様なほどこの家に馴染んでいるような気はしているけれど。
彼の名前はマオ。黒猫の、まあ多分雑種ってやつ。オスだけど結構体は小さめで、体格もスマートね。子猫だっていうのもあるのでしょうけど、きっと元々小さめの骨格なんでしょう。
まあ、私の巨体と比べたら猫なんてみんな小さく見えるもんでしょうけど。
その彼が、私の背中に貼りついて白いモフ毛に顔を埋め、ずーっと“犬吸い”しているというわけ。家族には俺様キャラな塩対応なくせに、何でこの子ったら私のことだけこんなに好きなんだか。私もう八歳よ?この子にしてみれば、立派なおばさんだと思うんだけど。
「あんた、前世人間だったんじゃないの?」
私はふぁーっと欠伸をしながら言う。
「その犬吸いのやり方、うちのご家族とそっくりよ?中に人間が入ってるみたい」
「よしてくれや、姐さん。俺様は人間が嫌いなんだ、冗談でも人間っぽいなんて言われたくないぜ」
私の白い毛にまみれて、黒い毛並みが半分白くなっちゃってる黒猫は告げる。
「この家の家族のことなんざ俺様はどうでもいい。この家に執着があるわけでもない。俺様がこの家にいる理由なんかただ一つしかねえ。姐さんがいるから、それだけさ」
「私がいるから、ねえ。……でもあんた、初対面の時から私にやたら懐いてたじゃない。あんたになんかしてあげた記憶なんか一切ないんだけど」
「でも、俺様がこうやってゴロゴロひっついても嫌がらずに許してくれるだろ?あんたはとても親切でいい犬だ。人間なんぞよりうよっぽど信頼できる」
それは、微妙に質問の答えになっていないのだが。初対面で私にひっついてきた理由の説明になっていない。
私が眉間に皺を寄せていることに気付いたみたい。背中から飛び降りた黒猫は、ふるふるっと体を震わせて言ったのだった。
「まあ、俺様にもいろいろ理由はあるのさ。そりゃあもう、いろいろとな」
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