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私は出来損ないの魔法使い。
箒で真っすぐ飛ぶどころか、
浮くことすらも出来ない。
学校でどれだけ魔法学が優秀でも、
箒の授業ではいつだってビリっけつ。
だから毎回お願いする。
「雨よふれ。ひどくふれ。」
望み通りに土砂降りの雨が降ると、
すごくホッとする。
思いに背いてからっからの晴れになった日何かは、
お腹が痛くて保健室に駆け込みそうになる。
地面に着いたままの足が恨めしい。
雲の上まで行けそうな程自由な箒が憎たらしい。
そんなある日、箒を折った。
クラスの人に
「どんなに頭が良くても箒で飛べなきゃ意味がない」って、
馬鹿にされたのが悔しくて、八つ当たりしたのだ。
後からとんでもないことをしてしまったと気付いた時にはもう遅い。
泣きながら、明日の授業どうしようと思っていると、
ふと今日馬鹿にしてきた奴の箒が目に入った。
「これを私のにしちゃえ。」
箒に名前何て入っていないし、箒なんてどれも似たようなもの。
黙っていればきっとバレない。
そう考えると、何だか今なら何でもできてしまいそうな気がして、
そっと跨いでみた。
すると、今までは憎たらして仕方なかった箒が、
ふわっと浮き上がる。
今までにない感覚。
やっと地面から離れた足。
そこで私は気付いた。
あぁ。なんだ。悪いのは私じゃなくて、あの箒だったのか。
そのことに気付いた私は、
その後、クラス全員の箒を全てへし折って燃やした。
今ばかりは、雨が降っていないこの天気に心から感謝した。
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