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部屋に導くや否や、アンメルは口を開いた。立ち姿にも見とれてしまう。
「最初に商品説明を失礼致します。私は家政婦ロボットですので、主に料理や掃除ができます。表情や会話については、プログラムの関係上、上手く出来ない場合もございます。ご了承下さいませ」
全身に及ぶ、見事な作りにも感嘆してしまった。絹糸を思わせる髪も、淡く色を帯びた瑞々しい肌も、人間と遜色ない――いや人以上だ。薄色のロングワンピースがよく似合う。
「それから……」
情けなく鳴いた腹の音で、アンメルの声が止まった。判断に迷っているのか静寂を纏う。それが妙に可笑しくて、つい笑ってしまった。
「ごめんね、食事今からでさ。話は食べながらでも良い? えっと、アンメルちゃんは食べる?」
問いかけに対し、驚きの顔が作られる。どうやら未学習の問いだったようだ。精密な動作に、また一つ感動が積もる。
「僕、知識だけはあるんだよね。発売当初からすっごく興味があって」
AIロボットレンタルサービスは、様々な分野に特化したAIを一定期間借りられるサービスだ。約十五年前に開始してから、名前を広げ続けている。
叔母が家政婦AIを寄越したのは、以前食の事情を話したからだろう。
最低一週間から借りられるが、費用はかなり高額だ。ゆえに、金持ちの娯楽として浸透している。僕なんかの収入じゃ、触れることすら烏滸がましい代物なのだ。それが今、目の前にあるなんて!
"町に溶け込むリアルさを"がコンセプトで、食事や着替え、風呂、排泄――と言っても真似事らしいが、それらの動作が全ての個体にプログラムされているらしい。
人に近すぎて、愛を見てしまう人間もいるとか。アンメルの話からも、表情はまだ課題のようだが。
「そうでしたか。お時間許すなら何かお作り致しますが」
「ありがとう。でも今日はいいかな」
「分かりました」
聞き分けの良さに、立派だと関心する。当然なのかもしれないが、何もかも新鮮に感じた。
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