腐れ縁

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夕方からのバイトを終えて帰ると、玄関の鍵が開かなくて戸惑った。差し込んで回すだけの鍵が開かないなんて、嫌な予感しかしない。 思わず部屋番号を確認する。 間違いはなかった。かえって不吉な予感がする。 だが、こんな時こそ落ち着くべきだと自分に言い聞かせ、考える。 施錠したはずの鍵はそもそも閉まっていなかったとか? いや、そんなはずない。ちゃんと毎回確認してるし、防犯意識は高い方だ。 でも、もしかしたら今日に限ってうっかりしたのかもしれないぞ? と次の可能性が浮かんで——。 まさか泥棒? 身構えた途端ドアノブが動いて、ドアがこっちへ向かって来たから慌てて飛び退いた。 「よっ。遅かったな。今日バイトだっけ?」 ドアを開けたのは和矢だった。ヘラヘラ笑っている。 「なにしてんだよ」 驚いたが、泥棒でなかったことに安心して肩の力が抜けた。だが、新しい彼女ができてこの部屋を出て行ったはずのおまえがなんで、と思ったら腹が立ってきた。 だけど合鍵を置いて行くよう要求しなかったのはお前だろ? と自ら突っ込んで、自業自得か、と気落ちした瞬間 「へへっ」 と笑われて、余計に腹が立った。 それでもすぐに、返せ、と要求できない自分にはもっと腹が立つ。 「邪魔だよバカ」 和矢を押しのけて中に入った。 ここは俺の部屋なんだ、俺が入って何が悪い、と内心プンスカしながら靴を脱いで、部屋の奥へと進む。 背後で和矢が、律儀に内鍵を閉める音が聞こえた。 なぜか口の端の筋肉が上に引っ張られるように感じて、本当のバカは俺か、とまたガックリする。
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