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「だからなんでここに戻るんだよ。しかもフラれるの早すぎだろっ」
「しょうがないじゃん。やっぱ良幸といた方が楽しいっつーか、ラクっつーか、居心地いいんだからさ」
実に軽い口調で和矢は言う。
それがどんなにムカつくか、こいつには永遠に理解できないだろう。
そしてそんなこいつは本当にどうしようもない、と思うのに、こいつを振った彼女に対して優越感を覚えているのだから自分の方がもっとどうしようもないのは明らかで、返す言葉がなかった。
「メシは」
ついそんなことを訊いてしまった。
「まだ。でも良幸帰ってきたら一緒に食おうと思って、さっき適当に買ってきたんだよね」
こんなことを言うのもこいつのいけないところだ。それに、こういうところが可愛いんだよ、なんて思ってしまう俺はもっといけないし、絶対幸せになれないタイプだろう。
「じゃあさっさと用意しろよ。バイト帰りで腹減ってんだよ俺は」
本当は廃棄品のパンをかじりながら帰ってきたから、空腹感はそれほどでもなかった。
「ほーい」
和矢がテーブルのそばにあったビニール袋から弁当を取り出して
「カルビ弁当としょうが焼き弁当、どっちがいい?」
と尋ねた。
なぜか期待に満ちた表情をしている。
「しょうが」
「だよなっ。良幸絶対しょうが選ぶと思ったんだよね〜」
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