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果てると、彼は名残を惜しむ間もなく私の隣で仰向けになった。まだ荒い呼吸が彼の熱情を物語っている気がして、それだけで恍惚とした。
ずっと好きだった人と結ばれたなんて奇跡だ。そう思うと、胸の奥で溶け出した感動がじわりと周囲に拡がっていく。そして私の中には、僅かばかりの誇らしさが生まれたようにも思える。
「はあぁ……真友、タバコ取って」
言われてすぐ体を起こし、ベッドを降りた。テーブルの上で重なったタバコとライターを、灰皿代わりにしたお気に入りの小皿と一緒に、彼に差し出す。
「はい」
「サンキュ。おまえも吸う?」
「ううん」
少し微笑んで首を振った。タバコなんか吸ったこともないし、吸ってみたいとすら思わない。
だけど彼が吸うのと彼のタバコの匂いだけは、私にとってずっと特別だ。一緒にいるとき彼が吸ったタバコの匂いが髪について、服について、肌について、家に帰っても一人じゃないような気がして、マーキングされたような気になって。
まるで彼の所有物になったような感覚は、私にとって幸福感とイコールだ。
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