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そっと振り返って、彼の口元にペットボトルを運んだ。厚みのない彼の唇に飲み口をつけてゆっくり傾けると、彼は顔の角度を変えて上手に水を飲んだ。
たったこれだけのことで、彼との距離がさらに縮まったように感じて嬉しくなる。彼の喉仏が動くのはとてもセクシーだ。
私を囲っていた彼の腕が離れて行き、彼の吐く息が、煙になって天井へ向かった。
私の部屋に彼のタバコの香りが充満していくことすら、この上ない幸せのように思える。それに、彼のものになった自分にはものすごい価値がプラスされたような気にまでなっている。
「なぁ、俺たちってさ……」
そこで言葉を切るものだから期待した。いや、していた期待がより高まった。
彼がサイドテーブルに灰皿を置いたその音が、やけに大きく聞こえた。私はベッドの端に腰掛けたままの体勢で、彼の言葉の続きに期待している。
彼との関係には発展など見込めないだろうと諦め半分だったのに、今夜は違った。目が合って、笑い合って、気が付いたらキスをしていて。
「真友の部屋、行っていい?」
そう訊かれて拒む選択肢が出てくるわけもなかった。ついに彼との関係が変わるんだと、そればかり考えていたから。
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