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ベッドが軋んで、再び彼が、後ろから私を抱きしめた。
早くさっきの言葉の続きを教えて欲しい。けれどすんなりと聞いてしまうのはもったいないような気もする。
甘えるように絡みつく彼の腕に、遠慮がちに触れた。心や口元は早くも緩んでいたが、まだ見せるべきじゃない気がしてどうにか素知らぬふりをする。
すると頬にキスをされた。
「ん」
それだけでこんなにも甘い声が漏れるのだから、私の思いは到底隠せていないのだろう。
だからか、彼は笑って、唇を首筋へ移動させた。熱い手のひらが、羽織ったシャツの上から胸を包んだ。
「ねえ」
「……ん?」
首やら鎖骨やら、やたらにキスを仕掛けてくる彼は、甘い生返事で答えた。
「さっき、何か言いかけてたのに」
半分蕩けたような声になったのは、したばかりなのにキスをされてまた火がついたからかもしれない。
「んー」
はぐらかそうとしているのだろうか。
キスをやめようとしない彼のことを、仕方がない人、と胸の内で甘やかしながらも、彼との関係に名前が付けられるのをせっつくような気持ちで待っている。すぐそこに夢見た幸福が掲げられていて、ほんの少し手を伸ばすだけでそれは手に入れられそうなのだから焦れったい。
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