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『伏見夜人(フシミヨルト)』は真面目なサラリーマン。 温厚な性格で真面目で誠実。 3/3生まれ、O型、37才、独身。 身長176センチ、やせ型の筋肉質。 学生の頃空手をやっていた名残で姿勢が良く身体能力も高いが、最近は密かに少し出てきたお腹に悩んでいる。 趣味は特に無く、仕事中心の不摂生生活を送っている。 洗濯物は全て日曜日に行う。 古いアパートの窓の外に設置された物干しに溜め込んだシャツを干すだけ。 下着は黒を好むけど、外には出さない。 一度風で飛んでしまって恥ずかしかったものね…? それに一日しかない貴重な休日だもの。 ゆっくりと寝て、のんびりと過ごしたいわよね…? カラカラ… 窓を開けて部屋に風を入れながらご飯を食べるのが好きな貴方。 少し不用心で心配だわ? でも大丈夫。私が辺りをちゃんと見張っておくから。 だから安心して食べて? 貴方が健全に心行くままに休息を取り、そして眠るまで… 私が貴方を守ってあげるから。 ザァァァァ… 月曜日、憂鬱な朝だ。 土砂降りに近い雨、それなのに高い気温、故に上がりに上がった湿度。 何もしていなくとも勝手に汗をかき体がベトベトになっていく。 これには流石の貴方もジャケットを放棄し出社した。 うん。私もそれでいいと思う。 貴方は営業じゃないんだし、会社に予備のジャケットも置いてあるんだから、そもそも律儀に毎日スリーピース合わせて出社する事もないのよ。 本当に真面目な人ね…? …パサ。 6:55、いつもとは違う事が起きた。 駅から会社へ歩く彼が、鞄の中身を確認した際に傘袋を落としてしまったのだ。 けれど彼はそれに気付かず、スタスタと行ってしまう。 それもそうよねこの雨足だもの。早く建物の中に入りたいわよね!? けれどこのままじゃ傘袋が…! 貴方は折り畳み傘を必ず傘袋に入れるのに… …だめ、誰も気付かない。 それに落とし物に気付いてもこんな雨じゃきっと拾わずにスルーしてしまう! 「っ、 …あ、あの!」 「はい?」 「あ、あの、…これ。」 きょ…今日が雨で良かった。 暗いし、私の真っ赤な顔もきっと傘で隠せる! 「ああ!?…と、すみませんわざわざ!」 「い!いえ!」 「どうもありがとうございました。」 貴方が…こんなに傍に。 あと一歩前に出れば触れられるほど…傍に。 こんなの初めて。 足元しか見えないけれど、伸びてくる手が見える。 傘袋を持つ私の手に、貴方の手が… 「本当にありがとうございました。 …すんごい降ってますね?」 「え、ええそうですね。」 恥ずかしかったのか、笑いで誤魔化す貴方。 でもお願い早く行って!顔が爆発しているの! 貴方にこんな顔を見られたくないの! 「…会社、近くなんですか?」 「えっ!?」 「こんな雨の中ご苦労様です。 お互い頑張りましょうね?」 「え、ええ。貴方も。」 …近くで聞く貴方の声は、本当に心地好かった。 ハキハキとお腹から出る声はやっぱり穏やかで。 後輩の面倒を見慣れているような、柔らかな包容力があって。 ああ、行ってしまう。 いつも見ている背中なのに、今日はこんなにも淋しく感じてしまう。 『あの、落としましたよ?』 ああ…そうだった。 貴方と初めて会ったのも、傘袋だった。 私が駅の改札で落としてしまった傘袋を、反対車線なのに走って届けてくれたのが、貴方だったんだ。 フフ! 不思議ね? 私達って傘袋で繋がっているのかしら。 これはやっぱり、運命なのかもしれないわね? 今日は7/7、今日を特別な日として記念日にしよう。 貴方と初めて歩み寄れた、特別な日として。
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