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眠そうな瞳、疲労を隠す姿勢。 クールビズの少し薄いくたびれかけた紺のスーツ、磨いていない黒の革靴。 月曜日から土曜日まで、貴方はそれしか着ない。 仕事用のスーツ、それが貴方の普段着。 ピッ… 6:45、改札を抜ける。 そして6:50の電車に乗り30分揺られ、会社のある駅で貴方は降りる。 季節はもう夏。伸びてきたら癖で跳ねるから短髪に揃えた髪。襟足から滴る汗を青いタオルで拭う。 「お早うございます。」 「あっ伏見先輩おはようございます!」 「はいおはよーさん。今日は寝坊しなかったな?」 「勘弁してくださいよ~まだ一回しか遅刻したことないのに!」 「一回でも社会人失格だってのー。」 7:00 懐っこい後輩、若松と共に出社。 貴方はこの後、約12:30に外に出てお昼を食べる。 近くのファーストフード店か、コンビニで。 そして19:00から21:00にかけて会社を出て家路に着く。 同僚と飲み会に行くのは稀で、行っても土曜日。 「…ふぅ。」 そうやって家路の途中、長い上り坂で二、三度溜め息を溢す。 この坂は一日働いた体には酷だもの。 でも、大丈夫。 私がちゃんと貴方を見守っているから。 この坂を越えれば家はすぐそこよ?がんばって? ガチャン… キイ。 21:00、近所迷惑にならぬよう静かに鍵を開け部屋に入り……貴方の長い一日は終わる。 今日も一日ご苦労様でした、あなた。
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