たづ姉さん

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 たづ姉さんはいつもジプシーのようなロングのワンピースを着て、豊かな黒髪にパーマを当てていました。色白でまつ毛が長く、声はハスキーで、背が高くて。  どこか殿方めいたところがあるのが魅力なのでしょう。女子寮でも、こころ密かにたづ姉さんを慕う者がたくさんおりました。  もちろん私もそのひとりで。数ある同期生のなかでも、私だけがたづ姉さんと同室になれたことが嬉しくて。  私たちの職場は繊維工場で、そこでは数多くの女性の職工さんたちが働いていました。それは大きな工場で、女子寮があるのが魅力でした。  他県からもたくさんの若い女性たちが働きに来ていました。私もそのひとりでした。  そして、これは時代なのでしょうが、みんな腰掛けのつもりで働いていました。  いいひとを見つけるか、縁談するかして、年かさの者はどんどん辞めていきました。  そこにいるのは、ほんの数年。その当時は思いませんでしたが、煌めくような青春の一ページでした。  仕事はきついし、面白くないし、食事だってたいして美味しくありません。それでもみんな、未来を夢みていた。楽しかったと、いまならば言えます。
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