第2話 手芸店『いやし』

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 いつもは帰りの会が始まる前に準備を終わらせているのだけれど、今日は帰りの会が始まる前に準備を終わらせられなかった。 「後は……」  教科書とノート……と文房具だけでなく、今日使った体操服の入っているカバンも忘れず机に置き、最後にさいほうセットをランドセルの中へと入れる。 「……」  ――そういえば……最近。あみ物していないな。  実は「ようせいさん」が見える事が分かった時。  その「ようせいさん」の着ている服の糸が出ていたり、破れていたりした事に気が付いて……それを直すのに針を使わないといけないという事が分かった。  それで直そうと思ったのだけど……。  ――お母さんに「危ないからダメ」って言われちゃったんだよね。  でも、針を使わずに直す方法が分からなかった。  どうしようかとなやんでいる時、ふと目に入ったのが毛糸であみ物をしているおばあちゃんの姿だった。  ――あ、そうだ!  そして、おばあちゃんにあみ物をならって何とか形になったモノを「ようせいさん」に渡していたんだ。  ――本当に最初のころはおばあちゃんに教えてもらっても全然何を言っているのか分からなくって、思い通りに出来なくてものすごく大変だったけれど……。  何とか完成させる事が出来たのはとてもうれしかったのを覚えている。
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