第1話 遠野みやこ

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 ――だって少し耳が赤くなっているもん。 「……」  でも、実はこの「声たち」は私以外には聞こえない。いや「声」どころか「この声の主すら見える」という人すら会った事がない。  ――もっとちっちゃいころはそこにいるのに気が付いてもらえなくて泣いちゃった事もあったっけ。  その頃は「目の前にいるのに!」とか「すぐそこにいるのに!」どれだけ私が言っても全然分かってくれなくて……。  ――あの時は「なんで分かってくれないの!」って思っていた。  保育園の先生やお父さんやお母さん。おじいちゃんもおばあちゃん。どんなに「大人の人」に言ってもみんな困った顔をして、私のほしい答えを言う人は……誰もいなかった。  でもそれ以上に「大人の人」だけじゃなくてお友達にも言っても「え、何もないよ?」とか「みやこちゃん。どうしたんだろう?」っていう顔をしていたのが……実は一番悲しかった。  そして、ずっと言い続けていたらみんなに心配されて……結局、お母さんが病院に連れて行ってくれた事もあった。  でも、こういった事があってようやく分かったんだ。  ――あ「みんなには見えていないんだ」って。私だけに見えているんだって。  病院で色々と調べてもらっても悪いところはなかった。 「……」  みんなに「分かってもらえない」という事が分かった時は、寂しい気持ちになったけれど……。
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