第1話 遠野みやこ

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 ――でも、今は全然寂しくない。  この学校に転校してからは「この子たちが見えている」という事は誰にも言っていない。  ――だって、本とかに出てくる「不思議な力」みたいな感じがするし!  今ではそう思う事にしている。ただ、実はちょっと言いそうになってしまう事があるんだけどね。  その時は何とか誤魔化しているのだけれど……。 『おい、手が止まっているぞ』 「あ、ごめん」  そう言ってきたのはついさっき私をそむけた男の子。 『もう、直してもらっているんだからそんな事言わないの!』  そんな男の子に注意をするのはかみを肩まで伸ばした可愛らしい女の子。 「ふふ」  私はそんな彼らを『ようせいさん』と呼んでいる。  本当は違うかも知れないから誰にも……二人にも言っていない。私だけの呼び方。  ――違ったら失礼だもんね。  そう思って誰にも言っていない私だけの「秘密」の呼び方だ。 「もう少しで終わるからね」 『ありがとう!』 『おう』
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