第2話 手芸店『いやし』

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 いつもはお母さんの買い物のついでに連れて来てもらうのだけれど、今日は宿題もないから一人で行ってみよう。  ――自転車で行ける距離だし!  私はいつもお小遣いをお手伝いやテストの後にもらう。  ――でも、一回も使った事がないんだよね。実は。  お母さんたちは「欲しい物がある時に使ってね」と言うけど、あまりそういう事がない。  ――本は図書室で借りればいいし、マンガもあまり読まない。お菓子は家に帰ったらいつも用意してくれているし。しかも、買い物について行った時にいざ使おうと思ったら……。  いつもお母さんが買ってくれる。だから、私はお金の使いどころがあまり分からずにいた。 「……」  お父さんはいつも夜遅くまで働いていて、いつも私が寝るくらいに帰って来る。お母さんはお父さんより早く帰って来るけれど、それでもいつも六時よりもおそくなる事が多い。  ――一度家に帰ってから「お店」に行っても……うん、時間も大丈夫そう。何より宿題は終わっているし。 「きりーつ」  そんな事を考えていると、いつの間にか先生の話が終わったみたい。  日直の人の言葉を聞き、みんな立つと……。 「先生さようなら。みなさん、さようなら」  帰りのあいさつをする。
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