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藤子は大きなヴィトンのスーツケースをひきずって
アパートの階段から降りた
外に出て駅までタクシーを拾おうとしたら
歩道をふさぐように駐車してある
ガンメタのマセラティを見つけた
そしてハッとした
文也がマセラティに寄り掛かって自分を待っていた
思わず驚いて脚を止めた
どうして家が分かったんだろう?
彼はすっきりとした
デニムの半袖シャツに
白のダメージジーンズを履いていた
とっても素敵だ
木の下に立っているので木陰が
上手く早朝の夏の日差しを遮っている
鼓動が跳ね上る
「空港で待ち合わせしてたから
ここで会えるとは思っていなかったわ 」
彼はスーツケースを引きずって
歩いてくる藤子を見つめていた
「車で空港まで行こうと思ってね
どうせなら藤子ちゃんも乗せて行こうと思って
面倒なヤツだと思われてないといいんだけど 」
絶対に彼を面倒なヤツなんて思っていない
藤子は彼に歩み寄った
「ここに立っていたなら暑かったでしょう」
優しい声で言う
文也は自分の車を示した
「実はついさっき降りた所なんだ
君がそのバカでかいスーツケースを引きずって
アパートの階段を下りてくるのが見えたんだ
たしか1泊じゃなかった?
家出でもする気? 」
文也がブハハっとスーツケースを
藤子から受け取って笑った
文也が解除ボタンを押すと
マセラティのヘッドライトが点滅した
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