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文也は藤子の手を取って
その車高の高い車に乗せ
シートベルトのバックルを止めてくれた
途端に心地よい冷房の冷たい空気が藤子を包んだ
ああ・・・涼しい~~
座席にゆったりと沈み込み
手入れの効いた革の匂いを嗅いだ
運転席の小型飛行機さながらに
計器がいっぱいついた
ダッシュボードや大きなルームミラーを眺める
クーラー通風孔は自動で左右に動いている
彼がトランクに藤子のスーツケースを乗せて
運転席に座るとその長い脚と長身で
シートがいっぱいになった
助手席の前に随分余裕のある藤子は
シートに座り直して
エンジンをかけて
運転する彼をうっとりと見つめた
まっすぐ前を見ながら
視線はあちこちのミラーを見渡している
「空港についたら・・・ 」
「あん!こっち向かないで!
まっすぐ前を見て!
運転してる横顔が素敵だから見ていたいの」
藤子は滑らかなイタリア製の皮張りのシートに
膝をついて文也をじっと見て言った
ブハッ
「なんだそれ!」
「こっち見ちゃダメだってば」
「ハイハイ」
彼はフロントガラスの向こうを見つめ
ほほ笑んでいる
う~ん・・・運転している彼は素敵だ
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