chapter7 渚のバルコニーで待ってて

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大韓航空機の通路を挟んだ窓際に 藤子を案内すると 文也の緊張はにわかに高まった ゆうべはよく眠れなかった 彼女の夢を見ては汗にまみれて 胸を高鳴らせて目を覚ます 朝方までその繰り返しだった 入国申請書と検疫事前入力のQコードを 入力している時ふと 以前にコロナにかかったことがあるかという 入力欄を見ながら藤子が聞いて来た 「ねぇ文也君!この欄・・・・ 最近一週間以内に発熱または コロナにかかったことがあるかって・・・」 文也は笑った 「そんなの今から旅行しようというのに 書くわけないしもうすっかり治ったよ でもあれで藤子ちゃんと出会えたから 僕にとってはラッキーな病気だったんだ」 「それもそうね」 彼女はいつものオフィスの服装じゃなく とてもカジュアルで白のワンピースに 可愛い麦わら帽子・・・ 三つ編みをしている髪からは 金色の輪っかのピアスが覗いている ストッキングは履いていなく これまたダンガリーの厚底サンダルを履いている その先から見え隠れしている ピンクの爪は手と同じ色でとてもかわいらしかった 彼女がシートに腰を下ろす時に ほのかに甘い香りが漂った 文也は体をそちらへ傾けて もっと深くそれを吸い込みたかった もちろんそんなことはしなかったが これでは先が思いやられる
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