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幼なじみ
どれだけ気持ちを伝えても獅子谷は取り合ってもくれず、誘ったって「俺はまだ勤務中だ」と一緒に駅に向かうことさえしてくれなかった。
たった一時間勉強に付き合ってくれただけ。
もうすぐ夏休みも終わるのに、それ以外の時間は一切会ってもくれなかった。
「マジで少しもだぞ?」
渋谷医院の待ち合いで嘆く俺。
愚痴を言いに来た俺に渋谷は呆れたようにしながらもちゃんと付き合ってくれた。
「毎日勉強してたのか?」
「あぁ」
「遊ぶこともなく?」
「偉過ぎて泣けてくるだろ?」
ため息を吐くと、渋谷はワシャワシャと俺の髪を雑に撫でてくる。
その手を払うと渋谷は笑っていた。
「なら、週末……気晴らしでも行くか?」
そう言いながら胸ポケットから出てきたのは一枚のチラシ。
それは納涼バザーの案内だった。
「は?どこだよ、ここ」
「このチラシ持って怜旺に見せてみたら?土曜の夕方、十六時にうちの前に集合」
「おい!勝手に……」
「毎年怜旺は行かないって言うけど、椎堂くんが来るなら今年は行くって言うかもな」
笑って渋谷は立ち上がると、伸びをしてこっちを見る。
「出店もあるし花火もあるよ?怜旺と一緒に見たいだろ?」
どこかもよくわからないその案内。
焼きそば、フランクフルト、ポテト、たこ焼き、かき氷、射的、金魚すくい……確かに出店の案内と十八時から花火とは書いてある。
不親切だと思いながらも渋谷を見ると、渋谷はニコッと笑った。
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