幼なじみ

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 渋谷医院の前に行っても誰の姿もなくて一瞬不安になる。だが、 「椎堂くん!早くない?」  すぐに渋谷が笑いながら中に入れてくれた。  スマホを開いて時間を確認すると、十五時を少し過ぎたところ。  さすがに早過ぎたと苦笑いしていると、渋谷は伸びをして白衣を脱いだ。 「結局どこ行くんだ?」 「怜旺から聞かなかったのか?」  渋谷の姿はいつものスラックスにシャツとネクタイではなく、今日は白のTシャツにジーパンで白衣を置いて戻ってきた渋谷は淡い緑色のシャツを羽織っている。 「あいつは何もしゃべらなかったし、『行かねぇ』って」 「うーん……来ないかなぁ?」  更に出してきたのはカフェオレとオレンジジュースのペットボトル。  オレンジを手にすると、渋谷はカフェオレを開けながら隣に座った。 「で、どこ行くんだよ?」 「行ったらわかるよ」  三分の一ほど口にしてただ微笑む。  結局、渋谷も教えてくれないなんて……幼なじみは似るのだろうか?そんな風にぼんやり考えながら外を見て、俺もペットボトルに口をつける。  まだ暑そうな外には人の気配はない。  獅子谷はやっぱり来ないのだろうか。  土曜日の今日は会えていないのもあって、獅子谷に会いたくて仕方ないのに。  渋谷に声を掛けられるまで俺はずっと期待したり、諦めたりを繰り返してただ外を眺めていた。
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