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俺よりは低いが渋谷よりも少し高い身長。サラサラの黒髪に優しげな目元。
愛想がよく、さっきからずーっと笑っている滝本はクリーム色のポロシャツを着て、首からはネームプレートを下げていた。
そこには確かに“滝本実”と書いてある。
「順くん、彼は若いよね?高校生……かな?」
「あぁ。怜旺のクラスの生徒の椎堂圭斗くんだ」
「怜旺の教え子なのか!?」
渋谷が答えると、更に笑顔を弾けさせて顔が近づいてきて焦った。
すると、滝本は「ごめん」と小さく笑う。
「僕は目があまり見えなくてね。ぼんやり感じる程度なんだ。だから、よかったら……少し触ってもいいかな?」
戸惑いつつも頷くと、渋谷は滝本の手を取って俺の頬に導いた。
どうしたらいいのかわからないまま触れられていると、
「椎堂くん、だっけ?きみ、イケメンだねぇ!」
滝本は俺の両頬に触れたままにっこりと笑う。
「あ……ども……」
対応に困っている俺を見て、渋谷は笑いを堪えていた。
微笑んでいた滝本は「ありがとう」と手を離すと、渋谷の方に向き直る。
「今日一緒に来てくれたのは社会見学?」
「いや、単純に慣れない勉強を頑張ったご褒美?夏らしい思い出作りだよ」
渋谷はその手に触れてまた腕に捕まらせると、見える屋台に足を向けた。
「それなら怜旺は?」
「な、椎堂くん連れて来ればあいつも来るかと思ったんだけどな」
二人の後ろを歩きながら俺はどうしたらいいのかわからなかった。
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