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滝本と渋谷は焼きそばだのたこ焼きだのどんどん買ってあっという間になくなった。
よく笑ってよく食べる滝本。
渋谷と獅子谷から話を聞いてぼんやりだった人物が今、目の前に居るのは少し不思議な気がした。
「でね、もう笑い過ぎちゃってさぁ!」
にこにこと楽しそうに話す姿は幸せそうで、獅子谷が何をあんなに背負っているのかわからなくなる。
この笑顔の滝本に獅子谷は会ったことがあるのだろうか?
こんな楽しそうにしている人のどこに償いが要る?
そりゃ目は見えないのかもしれない。
だが、滝本には悲愴感は全くない。
しっかり前を向いてちゃんと自分の足で歩いている。
未来を見据えて過去にばかり囚われてなんかいない。
短時間だし、俺の前で取り繕っている可能性は否定できないが、この笑顔は本物だと直感的に感じていた。
「ねぇ!椎堂くん!怜旺ってどんな先生?」
滝本にポテトを差し出されて一本取ると、口に咥える。
「どんなって……クールビューティ?」
考えて答えると、
「え?」
「ぶはっ!!」
滝本はキョトンとして、渋谷は飲んでいたコーヒーを吹き出した。
「何言ってんの?」
テーブルにあるウエットシートで口元を拭ってからテーブルも拭く渋谷に半笑いで見られて睨んでおく。だが、
「あははっ!そっか!確かに怜旺は昔から綺麗な顔してるもんね!……よかった。いい先生なんだね」
声を出して笑った滝本の安堵したような顔を見て胸が詰まった。
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