うるさい

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 残っていろと言ったくせに、帰りのSTが終わると教室から出て行った獅子谷。  帰ろうとは思った。  だが、今日はもう女とヤる気なんてなくなって、亮雅と祐生は帰らせてトイレに立つ。 「どこ行く気だ?」  別にトイレだけだしやましいことはないのにドキッとしてしまった。  このゾクッとするような低さの声。  今日、見ていてわかったのは普段の獅子谷は綺麗な顔を歪めることも綻ばせることもないということ。  メガネの奥の瞳は特に感情が現れることはなく、授業も帰りのSTも淡々と進めていた。  声は若干高めな気はしたが、それもこの低さを知っているからな気もする。 「便所くらいいいだろーが」  立ち上がってスラックスのポケットに手を突っ込んで歩き出すと、獅子谷は何も言わず俺の前の席に腰を下ろした。  思わず振り返ってしまっても獅子谷はこっちを見ることもなく、シャーペンをクルリと回して机に置いたファイルを開く。  その美しい顔を思わず見つめてしまった。 「ん?何だ?トイレについて来て欲しいのか?」 「んな訳あるかっ!!」  気づいた獅子谷が顔を上げて、俺は怒鳴って勢いよく教室を飛び出す。  綺麗だなんて思ってない!!  あんな奴……大人なんてどいつもこいつも世間体を気にして綺麗事を並べて……いつも嘘ばかりだ!!  そうだ!あいつだって、デリヘルで働いて人には言えないことを平然としてるじゃねぇか!  トイレに入って用を足す。  教室に戻った俺はイスに腰を降ろすと、ドカッと机に脚を乗せて獅子谷を睨んだ。
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