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「それか何?意識したのか?ヤるなら準備するけど?」
スマホを置いて、亮雅がこっちに身を乗り出してくる。
ギシッと音がして、亮雅の長めの前髪がふわりと揺れた。
「フザけてんのか?」
「お前相手にフザけるかよ」
言いながら四つん這いで俺の目の前まで来た亮雅はニッコリと笑う。
パッと両手を挙げてすぐに体を起こすと、上裸にスラックスのみだった亮雅は落ちていたベルトを拾い上げた。
スルリとベルトを通してグッと伸びをする。
「……でも、まだヤり足りねぇならマジで呼ぶか?」
「は?」
「たまには趣向変えてみてもいいんじゃね?ほら、この“レオ”はNGなしだし……な?」
再びスマホを手にした亮雅はまたあの画面を開いて笑った。
「勝手にしろ」
俺はタバコの火を消して立ち上がる。
結んであるヘアゴムを解いて腕に着けると、そのまま浴室に向かった。
物事を深く考えるのが苦手……というか嫌いだ。
―――「よく考えろ」クソ親父の声が蘇る気がして反吐が出る。
世間体だ、何だとうるさい親父とその親父の言うことを聞いてただ言いなりになっている母親。
三年前、俺が金髪にした時のあの反応もおもしろかったが、つい先日、久々に出張から戻った親父は……
「お前、男がそんな髪まで伸ばして!しかも、耳にもジャラジャラと……恥ずかしくないのか!いい加減にしろっ!」
顔を真っ赤にさせて怒鳴った。
ケッサクだった。
親父の顔に泥を塗ることが今は一番スカッとするから。
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