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「失礼します」
お父様の部屋に呼ばれた私。何を言われるのかは大体想像がつく。
「楓……。お前、最近あのAIとやけに親しくしているようだな?」
やっぱり。でも、それをお父様にとやかく言われる筋合いはない。
「それが、どうかしたんですか?」
私は毅然と言った。お父様の顔がみるみる赤くなる。血管が浮き出るのではないかと思った。
「どうかした、じゃない! まさか付き合ってるわけではあるまいな?」
お父様が机をドンッと拳で叩く。
「お父様が心配なさるようなことは何もありません。私も彼もいい友人として接していますから」
「お前はそうかもしれないが、あれはそうじゃないだろう」
あれ。
その呼び方に、とてつもない嫌悪感がわく。
「お言葉ですがお父様。彼はAIといっても、れっきとした心を持っているんです。そのような言い方をすると彼が傷つきます。やめてください」
お父様は私の言葉を聞くと、額を右手で押さえて首を横に振る。
「……はあ、お前も相当あれに入れ込んでるな。何がAIだ。これじゃあ人間の男を雇うのと変わりないじゃないか」
さっきから、「あれ」だなんて、まるで物扱い。
「どういうことですか?」
私はなるべく反抗的に続ける。
「腕のいい発明家に、半永久的に働かせることのできる執事が欲しくないかと言われてな。ちょうど完成した一体が高性能だと言うから、試しに使ってやろうと思ったんだ。何より感情を持たない。素晴らしい」
私はその言葉に引っ掛かりを覚える。
「どうして、感情を持ってはいけないんですか?」
「感情を持つと色々と厄介だ。私の意思に反することもあるし、それに……」
何よそれ。
「よーく、わかりました! 結局お父様は、自分の都合の良し悪しで決めてるんですね。私の気持ちも考えないで……」
「い、いや、それはお前のことを考えてだな……」
急にうろたえ出すお父様。
「私の交友関係にまで口出しする権利が、お父様にあるのですか?」
「お前、父親としては気にするだろう? どこぞの変な輩にお前を……」
私は頭に張り巡らされていた糸が一気にブチンと切れるのを感じた。
「彼は、変な輩なんかじゃありません! そもそも、お父様が雇った私のボディーガードじゃありませんか!?」
「ぐぅ……」
お父様は言葉に詰まる。
そうよ。
そもそも彼はお父様が雇ったのよ。それを自分にとって都合が悪くなったらばっさり切り捨てようだなんて。
許せない。
「私はこれ以上、お父様とお話ししたくありません。もう行きます」
私はドアに向かう。
「お前がどう思おうと、あれだけはダメだ! わかったな!」
「そんなの、お父様に決められたくありません!」
私はお父様に振り向いてそれだけ言って、部屋から出た。
もう、何も聞きたくなかった。
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