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「はあ、はあ。どこにいるの?」
屋敷が広すぎて、どこから捜せばいいのかわからない。
まさか、私に挨拶もなしに黙って出ていったりはしないわよね。
「……何を言われても気にしないでって言ったのに」
あれほど念を押したのに。
食堂の前を通ると、中からメイド長の料理谷さんが出てきた。
「あらお嬢様。まだお夕食にはお早いですよ。あ、私の作ったケーキの試作品を見に来られたのですか?」
「ねえ。彼……、樹を見なかった?」
「樹さん? ああ、さっきお嬢様のお部屋の方に向かわれるのを見かけましたよ。急いでいるみたいでしたけど。何かあったのですか?」
「ううん、何でも……。私の部屋ね! ありがとう!」
私はすぐに部屋に急いだ。
後ろから料理谷さんの声がする。
「お嬢様! 廊下を走ると危のうございますよー!!」
ごめんなさい。でも、今はそれどころじゃないの。
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