プロローグ

1/1
前へ
/11ページ
次へ

プロローグ

   2人がいる部屋は、分かっていた。  扉を押し開けると、まず最初に彼らの死体が目に入る。肩を撃ち抜かれた男と、目をむいて口の端から泡を零している青年が、倒れていた。絶命していた。当然だ。  そうなるように仕向けたのは自分なのだから。  彼らの黒い魂胆には、最初から気がついていた。しかし見張られている可能性も危惧して、演技を続けた。最終的には、全てが自分の思惑に収まった。 「あんたがうまく引っかかってくれたおかげで、こちとら国外への高飛びの準備もできた。金を落としてくれたのには感謝するよ」  成功の喜びに薄く笑いながら、彼はささやいた。室内に足を踏み入れると、床に目を凝らす。  血溜まりの中に浮かぶ、ネオンライトブルーの付箋を見つけた。自分が書いたものだ。証拠隠滅に長けた彼がとりこぼした、この場に残る最後の証拠。 「これさえ、消せば」  付箋を手の中で握りつぶすと、彼は、足元に残る死体に目を落とした。  この亡骸を乗り越え、大きく世界に羽ばたいていく。  そのためならば、自分は天使でも眠らせよう。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加