09 龍の守護

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 赤崎組には、懇意にしている警察関係者がいる。  今も昔も、警察と極道は持ちつ持たれつ。  お互いにお互いを利用するし、助け合う。  刑事の井瀬達哉は、そんな警察関係者の一人。  今回、千鶴の両親の件を処理するにあたり、  井瀬からこの件に関して、調査の依頼が来た。  徹底的に調べ上げた資料は結局、  で処理するために、井瀬に渡すことにした。  両親だけを排除しても、根本の解決にならないし、  何より、こちらで排除すると、  組同士の抗争になりかねないほどの、  根が深い事案だった。  事実、相手の組は、千鶴の両親を血眼になって探していて、  それが、相手の組の資金源であると証明するようなものだった。  そのため、警察を前面に出すことで、こちらは最小限の労力で、  血も見ず、相手の資金源を潰して報復し、井瀬も点数を挙げられ、なにより千鶴を護れる、  一石三鳥の戦略だった。    そんな静かな抗争が続いた数日後、  井瀬は会社の駐車場で、龍二たちを待っていた。 「よぉ龍二、お疲れさん。今日は報告」 「お疲れ様です、井瀬さん」  井瀬は、龍二にメモを渡す。   「お前の姫の関係者らしいな。あの夫婦」 「そうですね。本当は社会的に抹殺したかったのですが…」 「出来ねぇから、俺のところってとこか」 「お手数をおかけしました」 「いや。やっと明日、逮捕状が出る。こっち(警察)の着手も明日だ」 「わかりました。身柄はこちらで抑えてありますので、引き渡します」 「多分、しばらく出られないだろう。余罪も規模もありすぎて、えれぇ時間がかかった」 「でしょうね」 「おお。んでそのメモな。あの夫婦と繋がっていた組の野郎の名前だ」 「ありがとうございます。助かります」 「そっちはそっちのケジメがあるだろうからな」 「はい」 「じゃ、以上だ。また何かあれば連絡くれ」 「はい、お世話になりました」  言うだけ言うと、井瀬は帰っていった。  本家に戻り、すぐに龍翔に報告をする。 「少し時間が掛ったな。こちらで処理できればもっと早く終わったんだが…」 「いや、これでいい。こっちでやると、恐らく千鶴が気にする」 「だろうなぁ。だが関わった組の方は、俺が処理しておく。こちらも釘を刺しておかないといけない。龍二はこれ以上この件には関わるな。ぬるい手打ちだが、仕方がない。千鶴が最優先だからな」 「わかった。親父、よろしく頼む」  千鶴の最大の懸念である親の問題が、ようやく解決した。  明日は、おそらく千鶴の親の事件が大々的に報道されるだろう。  千鶴は、ようやく落ち着いてきたとはいえ、まだまだ不安定だ。  報道を目にすれば、おそらくまた落ちていくだろう。  その度に、俺が浮上させてやればいい。  俺は掴んだ手を決して離さない。   これから一生、二人で生きていくのだから。  千鶴、お前は綺麗なままだ。  大丈夫だ、千鶴。    何も心配いらない…。
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