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「あれっ?」
すべての店舗のデータ入力をし終え、中身をチェックしていると、粗利の数字がおかしい店舗が見つかった。
千鶴は、各店舗の数字を前年比較、月別比較等で、各店舗毎にチェックできるよう、一覧にしている。
これは、拓海に好評で、わかりやすいとそのまま使われている。
問題の店舗のデータをプリントアウトして、ぐりぐりとマーカーでチェックを入れた。
入力データに誤りがないか、もう一度確認する。
「単純に間違いましたっていう金額じゃないんだよね…」
この店舗は、月次の棚卸を操作しているようで、
その結果が数字に表れていた。
更に、直近半年分のデータと確認すると、
ここ2.3ヶ月の間に始まっていた。
今はまだ額が少ないが、時間が経っていくと、
どんどんエスカレートするだろう。
これは早めに対処しないといけないと、千鶴は思った。
…あとで拓海さんに報告しよう。
ちょうど今日のデータの入力が済んだ時、
玄関の鍵が開く音がした。
パタパタと足音を立てながら、玄関に向かうと、
丁度、龍二と拓海が帰ってきた所だった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
龍二は、出迎えた千鶴を抱きしめる。
「ご飯できてますよ」
「ああ、食べる。腹減った」
「お疲れさまでした。着替えてきてください、準備します」
「わかった」
チュッとおでこにキスが降ってきた。
「はいはい、後が詰まってるから、とりあえず上がってくれる?龍二」
「チッ、もうお前、別に部屋を借りろ」
「それは無理だ。龍二もわかってるだろ?諦めろ」
「フフッ、拓海さんもお帰りなさい」
「ありがと~、千鶴ちゃん」
毎日、こんな感じて、玄関でじゃれ合うのもいつものことだ。
□◆□◆□◆□
「あ、拓海さん」
晩御飯を食べ終え、片付けを済ませると、
千鶴は、さっき見つけた、店舗のことを伝える。
「単純な間違いって言える金額でもないんですよね。粗利とCFの数字もおかしいですから。遡ってみたら、ここ2、3ヵ月くらい前から始まってます」
「わかった。調べてみるよ。ありがとう」
「はい。よろしくお願いします」
拓海に報告を終えて、
千鶴は、お風呂に入ると言って浴室に向かった。
「さっきの千鶴ちゃんが言ってた店舗だけど」
「ああ」
「うちの情報探ってるヤツがいるって報告があがってた店舗なんだよ」
「状況は?」
「人物は特定済み。どことつながっているか暫く泳がせていたんだけど、それも終わってる」
「そうか、漏洩は?」
「それは大丈夫。そもそも、この俺がそんなミスするわけない」
「ん、なら制裁。もう待つ必要もない、即刻」
「わかった」
「向こうに警告も忘れるな」
「わかってるよ」
拓海は、そのまま資料を持って、自室に引き上げていった。
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