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熱燗ができる頃、鍋も食べ時になった。
「はい、いいですよ。どうぞ」
いつものように三人で手を合わせる。
「「「いただきます」」」
そのままでも食べれるように、味はしっかりついているが、
ぽん酢で食べてもいい。
「…うまいな」
龍二がぽつりと言う。
おいしい食事は、いつも二人を無言にする。
もりもり食べ進める。
それに、酒が加われば更に進む。
途中から、熱燗の作り方を拓海に聞いて、
千鶴が燗をつけて出してやる。
千鶴は、後藤からの梅サワーを、
炭酸で割ってちびちび飲んだ。
どんどん土鍋の具が減り、
どんどんお酒も減っていく。
最後に〆の雑炊を作った。
大きな土鍋に踊っていた大量の食材は、
本家から持ってきたお酒とともに、
二人の胃袋にきっちり納まった。
□◆□◆□◆□
綺麗に無くなった土鍋と、大量の徳利の後片付けをしていると、
「千鶴ちゃん、ごめんね。もう無理、寝る」
「はい、大丈夫です。おやすみなさい」
拓海は、千鳥足で自室に戻っていき、
龍二は、ソファで船を漕いでいた。
すべてを洗い終わって、流れる水をきゅっと止めたとき、
後ろから龍二に抱きしめられた。
「龍二さん、ちょっと待ってください。もう終わりますから」
「…ん」
返事をしても、龍二は千鶴を離さない。
千鶴は、龍二を引き摺りながらキッチンを拭き上げて、龍二に向き合った。
千鶴は龍二の腰に手をまわして、
「龍二さん、終わりました」
「千鶴、可愛いな」
するりと頬を撫でて、千鶴の唇にキスを落とす。
リップ音を立てて離れると、龍二は千鶴の首筋に顔を埋めた。
「酔いましたね、龍二さん」
「…ん、眠い」
「そうでしょうね、寝ましょうか」
「…ん」
珍しく素直な龍二を、ベッドルームに誘導する。
どさっとベッドに突っ伏して龍二が倒れこんだ。
「龍二さん、ちょっと待って。お布団に入らないと…」
揺すっても龍二が微動だにしないため、
千鶴は、ベッドに上がって龍二の跨るように立ち、
まずひっくり返して仰向けにした。
次に肩を持って体を起こすと、
掛け布団を捲れるとこれまで捲り、龍二の体を倒す。
頭のほうに移動して、脇から手を廻し引き上げた。
「着替えは…、いいよね。スウェットだから」
足を持ち上げて掛け布団を引き抜き、龍二に掛けてやった。
龍二の寝息を確認して、
千鶴はシャワーを浴びに浴室に向かった。
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