SS06 鍋奉行

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 熱燗ができる頃、鍋も食べ時になった。 「はい、いいですよ。どうぞ」  いつものように三人で手を合わせる。 「「「いただきます」」」  そのままでも食べれるように、味はしっかりついているが、  ぽん酢で食べてもいい。 「…うまいな」  龍二がぽつりと言う。  おいしい食事は、いつも二人を無言にする。  もりもり食べ進める。  それに、酒が加われば更に進む。  途中から、熱燗の作り方を拓海に聞いて、  千鶴が燗をつけて出してやる。  千鶴は、後藤からの梅サワーを、  炭酸で割ってちびちび飲んだ。  どんどん土鍋の具が減り、  どんどんお酒も減っていく。  最後に〆の雑炊を作った。  大きな土鍋に踊っていた大量の食材は、  本家から持ってきたお酒とともに、  二人の胃袋にきっちり納まった。 □◆□◆□◆□  綺麗に無くなった土鍋と、大量の徳利の後片付けをしていると、 「千鶴ちゃん、ごめんね。もう無理、寝る」 「はい、大丈夫です。おやすみなさい」  拓海は、千鳥足で自室に戻っていき、  龍二は、ソファで船を漕いでいた。  すべてを洗い終わって、流れる水をきゅっと止めたとき、  後ろから龍二に抱きしめられた。 「龍二さん、ちょっと待ってください。もう終わりますから」 「…ん」  返事をしても、龍二は千鶴を離さない。  千鶴は、龍二を引き摺りながらキッチンを拭き上げて、龍二に向き合った。  千鶴は龍二の腰に手をまわして、 「龍二さん、終わりました」 「千鶴、可愛いな」  するりと頬を撫でて、千鶴の唇にキスを落とす。  リップ音を立てて離れると、龍二は千鶴の首筋に顔を埋めた。 「酔いましたね、龍二さん」 「…ん、眠い」 「そうでしょうね、寝ましょうか」 「…ん」  珍しく素直な龍二を、ベッドルームに誘導する。  どさっとベッドに突っ伏して龍二が倒れこんだ。 「龍二さん、ちょっと待って。お布団に入らないと…」  揺すっても龍二が微動だにしないため、  千鶴は、ベッドに上がって龍二の跨るように立ち、  まずひっくり返して仰向けにした。  次に肩を持って体を起こすと、  掛け布団を捲れるとこれまで捲り、龍二の体を倒す。  頭のほうに移動して、脇から手を廻し引き上げた。 「着替えは…、いいよね。スウェットだから」  足を持ち上げて掛け布団を引き抜き、龍二に掛けてやった。  龍二の寝息を確認して、  千鶴はシャワーを浴びに浴室に向かった。
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