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襲撃からしばらくして、
ようやく千鶴の両親が逮捕されることとなった。
本家の地下には所謂、監禁部屋と呼ばれる地下室がある。
千鶴の両親は、その日のうちに龍翔によって捕獲されていて、
その場所に、今日まで監禁され、監視されていた。
そこまでしたのは、千鶴にこれ以上近づかせないため。
余計な奸計を巡らされないように、
その時まで、目につくところで監視していた。
千鶴には知らせる必要はないと、龍翔がすべて算段し、処理した。
千鶴がこの件を知ることは、永久にないだろう。
やっと調べがついた警察から連絡があり、二人を引き渡した。
すでに余罪が複数あり、しばらく表には出てこられないとのこと。
事件が事件なだけに、報道でも連日、大々的に報じられた。
「…犯罪者の娘になっちゃった」
部屋で、その報道を見ていた千鶴が、ぽつりと呟く。
落ちていきそうになっている千鶴を、
龍二は抱き寄せて、
「犯罪者はあのクソ親だが、千鶴は千鶴だ。大丈夫」
「…」
「千鶴は綺麗なままだ」
「…」
千鶴が龍二の首筋に擦り寄ってくる。
龍二はその体をしっかりと抱きしめて、
落ちていかないように言い聞かせる。
「千鶴がクソ親の罪を背負う必要はない」
「…そうなのかな」
「そうだ。それに、千鶴は親父の娘で、厳ついさんたちが千鶴の兄弟だろう?あんなクソ親は、千鶴から縁を切ってやれ」
「…ぅん」
「それに、千鶴は俺のものだ。何があっても離さない」
「…はい。私も龍二さんの傍から離れません。ありがとう、龍二さん」
「ん、納得したか?」
「はい、何とか」
「よし」
親の罪を、千鶴が背負う必要はない。
龍二の言葉は、千鶴の心を軽くした。
千鶴の親は龍翔で、家族は厳ついさんたち…。
千鶴が実の両親のことで落ちていかないように、
龍二は、千鶴に何度も言い聞かせる。
千鶴の居場所は、龍二の隣なのだと。
千鶴は、その龍二の気持ちを嬉しく受け取った。
□◆□◆□◆□
「龍二さん、気を付けて行ってきてください」
今日もまた、龍二たちは泊りの出張となり、
千鶴は本家に送り届けられた。
「…千鶴を連れていきたい」
「私はここで待ってますから、お仕事頑張ってきてください」
千鶴を腕の中に閉じ込めて、
なかなか離そうとしない龍二に、
千鶴は労いを伝える。
散々渋って、ようやく龍二が出かけた。
龍二を送り出すと、千鶴は、慎治たちと大学へ向かう。
講義が終わり本家へ戻ると、厳ついさんたちと一緒に過ごす。
この毎日の繰り返しが、幸せなことだと、
思わずにはいられない。
千鶴が欲しくても、手に入らなかった、
普通は誰もが手にしているであろう、家族の情。
龍二が与えてくれたこの縁を、
千鶴は大切にしようと、心から思った。
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