〜アンドロイドの君へ〜

　また、彼女はたまにじっと俺の顔を見つめる。

　そんなにイケメンでもないし、見つめられたら照れるに決まっているのに。

「やめろよ～……」

　俺はある日、顔を逸して彼女にそう言った。
　瞬時にチラリと見ると、彼女は困惑の表情のまま返す。

「マスターは、私の顔をいつも見つめています」

　確かにその通り。
　自分の理想通りの彼女なのだから、俺は見ていたいに決まっている。

　しかし自分は照れるため彼女に分からないようもちろんこっそりと、のつもりだった。
　それなのにまさか、すでに彼女にばれているとは思わなかった……

　俺は慌て、照れたまま弁解をする。

「っ……それは、君を買ったのが俺だから良いんだよ！！」

　すると彼女は一間置いてから「分かりました」とだけ言い、後ろを向いて使い終わったばかりの鍋なんかを片付け始めてしまった。

　……怒らせた？？
　それならいつも通り、怒ったような表情に変わるはず。

　彼女は高性能なアンドロイド。
　単純な自分に繊細な彼女は難しかっただろうかと時々考えてしまい、思わずため息。

　彼女の気持ちが分からない。
　これが人間の彼女だったとしたら、自分はもっとそう思うことになっていただろうか？