〜アンドロイドの君へ〜

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 今まで彼女が居なかった独り者の俺は、寂しさのあまりにある日とうとう若い女性型のアンドロイドを買った。  梱包されていたときに着ていた、白い長袖のブラウスに黒のワンピース姿。  清楚な雰囲気は見た目からしても伝わってくる。  俺の好みの凛とした顔つき、なびく黒髪、静かだけれど良く通る声、スラッとした背に手足……  理想通りの姿に、俺は天にも昇る心地だった。  ところが彼女は笑ったことがない。  無表情な訳ではなく、困惑やちょっぴり怒った表情なんかは見せてくれる。  それでも笑顔は全く無い。  いわゆるツンデレやクーデレというような、どこか照れ隠しをしているような様子もないので、俺の方はかなり親密になろうと話し掛けているつもり。  笑顔が見てみたいと工場や販売会社に問い合わせてみても、故障なら引き取って『交換』と言われてしまう。  彼女はこんなに俺の好みなのに、交換するなんてとんでもない。  俺はすぐに修理を諦めた。 「マスター、お食事が出来ました」  部屋の外から彼女の声。  夕食の呼び掛けに、俺は喜んでキッチンに向かう。  社会人になって数年の安給料で借りている郊外の小さなマンションの部屋だが、好きになった相手が居てくれるのはやはり良いもの。  そしてもらったばかりのボーナスを彼女に注ぎ込んで、本当に良かったと思っている。
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