王子様に愛された男

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 俺には1つ年下の弟がいる。  と言っても血が繋がっているわけではない。  俺が7歳の時に再婚した両親の連れ子同士というやつだ。    一人っ子だった俺は、弟ができたことが嬉しくてとにかく仲良くなろうと必死だった。  最初は心を開いてくれなかったけれど、徐々に打ち解けていき笑顔を見せてくれるようになった。  弟は顔立ちがかわいらしくて、よくからかわれていた。  俺は何も言い返さない弟に代わって言いたいことを言ってからかってくる奴らを蹴散らしていた。  兄ちゃんが守ってやるからなと言うと、嬉しそうに微笑む弟。  何歳になってもかわいい弟、俺はそう思っていた。  俺と同じ高校に入学してきた弟はその麗しい見た目から王子様と呼ばれて、校内の人気をかっさらう存在になっていた。  対象的に女受けはしない悪人面ででかいだけの俺。  周りからは2人が並んでいると美女と野獣のようだと揶揄された。  誰にでも優しい王子様。  そんな王子にはまだ特定の相手がいなくて、その座を狙う女達が告白をしては玉砕していた。  王子が誰にも靡かない理由を俺は知っている。  それはずっと密かに思いを寄せるお姫様がいるからだ。  そんな野獣な俺にも彼女ができた。  隣のクラスのかすみちゃん。  一目惚れした俺が好きだ好きだと言い続けて、ようやく付き合う事ができるようになった。  付き合いは順調で、キスもそれ以上の事もする関係になった。  手を繋いで一緒に帰って、公園で話をしてまた明日と言って別れる、これが毎日のルーティーン。  そんな姿を見られていたようで、彼女と別れて1人で歩いていると、後ろから弟に声をかけられた。 「ねぇ、兄ちゃん  さっき一緒にいた人だれ?」 「あぁ、見られたか  彼女できたんだよ  父さんと母さんには言うなよ」  表情を変えることなく「へー、彼女か」と呟いた。   「どうした?」 「兄ちゃんは僕のものだと思ってたのに」 「おぉ?焼きもちか!?  かわいいやつだな  心配しなくてもお前の事好きなのは変わらないって」 「好きね……  僕とは違うだろうけどね」 「違う?」 「はぁ、なんでもない」 「なんだよ変なやつ」  それからしばらくして、彼女の態度が急に余所余所しくなった。  いつも一緒に帰っていたのに断られるようになり、ついには好きな人ができたから別れたいと言われた。  好きな人ができたなんて言われたら、別れたくないなんて言えず、そっかと笑って別れた。  その事をついポロリと弟に話すと、他にきっといい人がいるよと励ましてくれた。  兄ちゃんはかっこいいもんと笑顔で言われて、泣きながら笑った。  それから半年後新しい彼女ができた。  1つ年下のれなちゃん。  ずっと好きでしたと告白されて、こんなかわいい子が俺のことを好きなの!?と舞い上がった俺はオッケーして付き合いが始まった。  大人しい性格の彼女は付き合う事が初めてで、大事にしようと思ってキスをするまでにものすごく時間をかけた。  エッチなんてまだまだ先だと思って、いつも理性と戦っていた。  ちょうど付き合って半年になろうかという頃に悲劇は突然訪れた。  また好きな人ができたから別れてほしいと言われたのだ。  好きな人ができたって何なんだよ。  こっちは大事に想ってきたのに。  そんな事は言えるはずもなく、また笑っていいよと受け入れた。  いつものように弟が部屋にやってきて勉強し始めた。  そんな弟に、また彼女と別れたと伝えた。  弟は興味がなさそうに「そう」と一言だけ呟いた。  まぁ俺の話なんて興味ないか。  ベッドに頭を乗せてボーッとする。   「もうしばらく恋愛はいいや……」 「兄ちゃん、大丈夫?」  勉強をしていた手を止めて俺の隣に座った。 「はぁ、大丈夫じゃない」  どこかにいないのか。  俺だけを好きでいてくれる子は。 「そういや、そっちはどうなの?  ずっと前に好きな人がいるって言ってたじゃん」 「そうだねー、まだ気持ちは伝えてないんだけど、絶賛失恋中だから伝えてみようかなーって思ってるとこ」 「へー、俺と一緒じゃん  弱ってるとこにお前が告白なんてしたら相手はイチコロだろ  お前が落とせない女なんていないだろうし」  そんな女がいたら見てみたい。 「女の人じゃなくてもいけると思う?」 「男なの?」  恥ずかしそうに顔を赤らめて頷いた。  マジか。 「いけるんじゃない?  俺もお前ならありだなー」 「ほんと?嘘じゃない?」  やけに食いついてくるな。  このかわいい王子様の心を射止めた男ってどんなやつなんだろう。 「ほんと、ほんと  お前に落ちないやつなんていないよ  頑張れ」  背中をポンポンと叩いてエールを送った。  どうかうまくいきますように。 「じゃあ、言っちゃおうかな」  咳払いをして俺を見つめた。  「好きだよ、初めて会った時からずっと」 「練習?」 「いや、本番」  恥ずかしそうにモジモジする弟。 「本番……?  えぇっ!?」 「やっと言えた  兄ちゃん僕に落とせないやつはいないって言ったよね?  僕ならいけるって言ったよね?  落ちてくれるんだよね??」  矢継ぎ早に口撃が飛んできた。 「俺?なんで?」 「一目惚れだよ  こんなにかっこいい人がいるんだって衝撃を受けた  顔だけじゃなくて、いつも僕を守ってくれる男らしさとか、さりげない優しさとか……もうね、全部好き」  顔を真っ赤にしながらそう言った。 「おい、目と頭は大丈夫か?」 「兄ちゃん!  人が真剣に話してるのに!!」 「ごめん  信じられなくて」 「とにかく、今日から兄ちゃんは僕だけのものだから  僕の恋人になってくれるよね?」 「待て待て、俺達は兄弟だ」 「戸籍上だけでしょ  血繋がってないじゃん」 「そうだけど……」 「全然問題ないって」  弟がとても自然に俺の唇に自身の唇を重ねた。 「うわ!!」  動揺して弟から距離を取ろうとした。  そんな俺を逃すまいと腕を掴まれる。 「僕に落とせないやつはいないんでしょ?」  弟が俺の顔を見て妖艶に笑った。 「ということで、これからもよろしくね  お兄ちゃん♡」  王子様の心を射止めた男は、本気を出した王子様の猛攻撃から逃れる事はできず、王子様の寵愛を受ける唯一の男になりました……とさ。
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