bouquet

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しばらく家の前で悶々としながらバラの花束を見ていた桃華だったが、このまま突っ立っていてはせっかく貰ったバラが萎れてしまうと思い、家の中に入る。バラの花を花瓶に入れながら、桃華はポツリと言った。 「こんな花束、絶対恋人に贈るものだってわかるやつじゃん……」 リボンで綺麗にラッピングされたバラは、花屋に足を運ばなければ手に入らないものだ。花屋は女性ばかりが店内にいるわけではなく、化粧品店よりは入りやすいだろう。しかし、快斗の性格を知っている桃華はモヤモヤとした気持ちが胸の中に溜まり、ため息を吐いてしまう。 そんな時、ふと嫌なことを思い出してしまった。最近一緒に飲みに行った友人の話である。高校時代の友人は、最近付き合っていた彼氏に浮気をされ、それが原因で破局したばかりだった。そんな彼女がお酒を煽るように飲みながら言った台詞が、桃華の脳内に再生される。 『最近さ、あいつやけに優しかったんだよね。今まで私が「ほしい」って言っても、「高い」って言ってプレゼントしてくれなかったバッグとかアクセサリーとか、急にプレゼントしてくれるようになったり、「愛してる」とか言うようになってさ。怪しいと思ってこっそりスマホ見たら、マッチングアプリで会った女と浮気してたってわけ。浮気してること誤魔化すために優しくするって結構あるらしいよ』
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