嫉妬

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嫉妬

テラスで乙哉は進められるままにカクテルを口にした。 美しいブルーに惹かれるように口に含んだ、さっぱりとした口当たりで甘く美味しい、だがそれは見かけと違いアルコール度数は意外と高かった。 ふわふわと浮き立つ気分とアイドルとの会話に饒舌となり、光輔が背後に立った事に気づかなかった。 「乙哉!探したぞ」 「こうすけ」 「お前・・・・・飲んだのか?」 「これ、カクテル」 「見せろ」 それはブルーのカクテルだった、色も美しく何も知らない乙哉が飲むのもわかる、だかアルコール度数40度、ウォッカベースのカクテル、ブルー・マンデー (Blue Monday) だった。 「君は彼にこれを飲ませたのか?」 「ええ、お似合いだと思って・・・・・」 「悪いが、失礼する」 「待ってください、僕達今話をしてるところです。いきなり来て酷いじゃないですか」 「僕達?乙哉は私の恋人だ、手を出すな」 光輔は乙哉の腕を掴んで、会場を出た。 エレベーターに乗ると最上階のボタンを押した。 何も知らない乙哉は光輔に支えられて立っている。 部屋に入ると、乙哉をソファに座らせた。 光輔の顔は怒っていた。 「乙哉、俺はお前になんと言った?」 「・・・・・覚えてない・・・・・こうすけ、怒ってる?」 「どこにも行くなって言わなかったか?」 「言った」 「どうしてテラスに居たんだ」 「・・・・・」 「あいつと酒を飲んだのか?」 「カクテルだよ」 「カクテルでもあれはアルコールだ、しかも強い酒だ」 「僕酔ってる?」 「あぁ〜ベロベロじゃない」 「ごめん」 「お前、あいつが気になるのか?」 「違う」 「だったら、どうして付いて行った?」 「・・・・・だって・・・・・」 「だって何だ」 「・・・・・こうすけ、ごめん」 「あいつの所に行くか?」 「行かない、ごめん」 潤んだ目で光輔を見上げる、本当はこんな事は言いたくなかった。それでも乙哉があいつに着いて行ったのが、どうにも気に入らなかった。 あいつに会ったのは2回目とは言え、テレビでも見ていた。 「乙哉、もう行くなよ。約束してくれ」 「わかった、もう絶対行かない」 酔いがまわったのか、目はトロンとして、いつにも増して色っぽい、しかも何故か妖艶だった。 だからと言って、酔った乙哉に手を出す事は出来ない。 せっかく今夜のためにこの部屋を予約したのに、このまま朝まで何もせずに寝るかと思うと、益々腹が立つ。 「眠い」 乙哉はそう言うとベッドに潜り込もうとした、慌てて光輔が待ったをかける。 「乙哉!そのまま寝るな」 そう言うとタキシードの上着を脱がせ、ネクタイを外す、カマーバンドを取るとシャツのボタンを外した。 「まったく」 乙哉が酒さえ飲まなければ、今頃は・・・・・違う雰囲気で服を脱がせていたはず。 乙哉を見ればズボンを何とか脱ぎ、パンツ一枚でベッドに入るところだった。 光輔は乙哉が脱いだ服を一枚づつハンガーに掛けた。 自分も服を脱ぎ乙哉の隣に横たわる。 すでに気持ちのいい寝息を立てて乙哉は就寝中だ。 顔を見れば邪気のない子供のような愛らしい顔をしている。 大人気(おとなげ)ない嫉妬だとはわかっても、止められない怒りで感情的になってしまった。 乙哉を抱きしめ、昂る身体を押し付けて無理矢理目を閉じた。
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