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乙哉のわがまま
朝食が終わるとまたベッドに潜り込む、結局夕方まで二人は眠り続けた。
乙哉の希望通り、腕枕をして光輔に抱きしめられて眠る乙哉。
乙哉が目を覚ますと隣で気持ちよさそうに眠る光輔がいた。
昨夜の事やさっきの風呂でのことを思い出しながら、光輔の顔をまじまじと見る。
光輔が自分を好きになるなんて、思ってもいなかった。きっと自分だけの片思いだろうと思っていた、もし気持ちを言わずに別れていたら・・・・・
バーでぶつかったのがまさか、光輔だったなんて………あの時光輔は自分を見てどう思ったんだろう。
あんなところで相手を探して声を掛けられるのを待っていたなんて………
光輔の頬を撫で唇の隙間を指でなぞった、ベッドから起きて服に着替えてリビングのソファーに座る。
光輔が起きるまで、TVを付けた。
画面に見たような顔の男子が躍っている、ダンスも軽快で歌を歌いながら楽しそうに笑いかけていた。
昨夜ラウンジで話しかけた青年だった………名前は宝生 祐月。
うっとりと画面に見入っていると、いきなり画面が真っ暗になった。
リモコンを探す、後ろに人の気配がして振り返ると光輔が不機嫌な顔で自分を見ている。
「光輔起きたの?もう夕方だよ、帰ろう」
「何見てたんだ」
「TV」
「TVで何を見てた?」
「画面」
「お前は性懲りもなく、アイドルが好きなのか?」
「違うよ、昨日の子が出てたから見てただけだろ……」
「昨夜言わなかったか。俺以外見るなって」
「無茶言うな、アイドルを見るのもダメなのか」
「ダメだ」
「光輔って横暴だったんだ」
「乙哉………お前が他の奴見てるのが我慢できないんだ、だから………わかるだろ?」
「好きだから?」
「そう、わかってるならもう見るな」
「うん、もう見ない」
「乙哉!キスするか?」
乙哉は立ち上がって、光輔の前に立った。
光輔が乙哉の頬に手を置いて、顔を引き寄せてキスをした。
始めは唇を合わせただけの優しいキスをして、そのまま唇の隙間から舌を差し込み、口内で乙哉の舌を探す。
お互いの舌を絡めて、吸い合い唾液を交換するように唇を口に含む。
「光輔のキスって凄い」
「嫌か?」
「……僕以外しないで」
「しないよ、お前とだけ」
「ほんと?」
「あぁ~これまでだって、こんなキスはしたことない」
「ふ~ん!信じる。それより早く帰ろう。僕明日は授業があるから準備しないと」
「お前こんなキスの後にそんなこと言うなよ」
「だって………」
「分かった、出よう」
ホテルを出て夕食を済ませ、乙哉をマンションまで送っていった。
「明日、何時に終わる?」
「五時ぐらい」
「迎えに行く」
「いいよ、電車で帰るから、光輔だって仕事だろ」
「ダメだ、送ってから仕事に戻る」
「なにそれ………そんなに信用してないの?」
「そうじゃなくて………襲われたり途中で倒れたりしたらどうするんだ」
「もう、女子でもないし病弱でもないから来ないで」
「わかった、じゃあ明日は逢わないんだな」
「………なんで?逢いたいのに………」
「乙哉!俺を揶揄ってんのか?」
「違う………だって逢いたいから」
光輔は乙哉のそんな我儘が嬉しくてたまらない、いくらでも聞いていたいし甘やかしたいと思ってしまう。
それでも甘い顔ばかりはしていられないと、怒った顔をすれば乙哉が悲しい顔をする。
それがまた堪らなく愛しくなる光輔だった。
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