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光輔は・・・・・
光輔は乙哉の迎えに行くのを躊躇っていた、昨日乙哉が困った顔をしていた。
やっぱり迷惑だったか・・・・・
乙哉をマンションで下ろし急いで仕事に戻った。
その後は山積みの書類とその後の接待で自宅に戻ったのは深夜だった。
乙哉の声が聞きたかった、それでも寝ている乙哉を起こすのは迷惑だとやめた。
翌日は門から少し離れたところで、乙哉が出てくるのを待った。
いつもの時間になっても乙哉が出てこない。
1時間だけ仕事を抜けて来た身でこれ以上待つ事はできなかった。
仕方なく仕事に戻り、仕事を済ませて乙哉に電話をした。
何度しても電話に出ない、心配でマンションまで行くとマンションの前で佇む乙哉が居た。
俯いて泣いていた、車を止めて乙哉の側まで歩いた。
「乙哉!どうした?」
乙哉が驚いて顔を上げた、涙が溢れて流れ出した。
「光輔・・・・・何処行ってたの?」
「・・・・・乙哉!どうした?」
「だって・・・・・電話も来ないし迎えも来ないし・・・・・奥さんがいるの?」
「乙哉!奥さん?何の事?」
「光輔には奥さんがいて、僕は一晩だけの恋人?」
「乙哉!馬鹿なこと言うな!部屋に行くぞ、何故そうなったのかはっきり聞かせろ」
光輔は乙哉の腕を掴んで部屋へ向かった。
エレベーターに乗っても乙哉は泣き止まない、乙哉がどうしてあんな事を言い出したのかさっぱり分からなかった。
泣く乙哉を抱きしめ、髪を撫で背中をさすった!
乙哉は光輔の胸に顔を押し付けて泣き続ける。
せっかく恋人同士になったのにわけもわからず泣く乙哉が切なくて、光輔まで胸がいっぱいになった。
部屋に着いて乙哉をソファに座らせ自分も乙哉の前に座った。
「乙哉!何があったのか教えてくれるか?」
気持ちを静め優しく聞いた。
「光輔は来ないし電話もないし………僕は光輔の事何も知らない………」
ぐずぐずと鼻をすすりながら乙哉が話し出した。
「何が知りたいか言ってくれるか?俺の何を知りたい?」
「奥さんは?歳は?僕の事恋人ってほんとにそう?」
「他には?」
「住んでるのはどこ?男の僕が恋人でもいいの?」
「乙哉!全部話すからよく聞けよ、まず俺には奥さんはいない。だって俺はゲイだから。だから乙哉が恋人になってくれたら、最高に嬉しい。歳は34歳。住んでるのはここから車で30分のマンションだ、今度俺のマンションに行こうな、それから今日もお前を迎えに行った、1時間待ってたけど出てこなくてまた仕事に戻ったんだ、ごめんな。ゆうべ電話しなかったのは接待で帰ったのが深夜だったんだ、それで寝てる乙哉を起こしたくなくてしなかった。」
「・・・・・」
「他にはないか?あったら、この際全部吐き出せ!」
「………光輔………僕はほんとの恋人?」
「勿論、乙哉もそうだろ?」
「うん、光輔は一番大切な恋人だよ」
「俺たちは両思いだな」
「うん………」
その時光輔の腹の虫が盛大な音を立てて鳴いた。
「元気のいい虫を飼ってるね」
「餌、やらないとうるさいんだ!なんか作ってくれるか?」
「うん」
二人顔を見合わせて笑った、乙哉がやっと安心した顔になって光輔はホッと安堵のため息をついた。
光輔は乙哉の誤解を解くために丁寧に説明した、きっと乙哉は不安になったんだ。
それは俺の事が好きだから・・・・・そう思うと嬉しくてたまらない。
乙哉の手作りの食事を食べながら、今夜はこのまま泊まってしまおうかと考えていた。
乙哉にとっても光輔にとっても始めての恋愛は戸惑う事ばかりだった。
それでも好きな気持ちはどんどん膨れ上がり、一日も逢わずにいられないほど好きだった。
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