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乙哉と二人
乙哉の実家は大きなお屋敷の立ち並ぶ一角にあった。
周辺の家はどの家も大きな門構えに、立派な石塀が巡らされていて、どんな人が住んでいるのかさえ分からない。
夜ともなれば誰一人歩く人もなく、街灯の灯りがポツポツと灯るだけだった。
仕事が終わって、乙哉の家に行くと乙哉はすでに食事の用意をして待っていた。
家の中は適度にリフォームされ、キッチンもバスルームも新しく使いやすくなっている。
「この家いいな、ご両親は亡くなったのか?」
「うん、母が亡くなったのが三年前でここに一人いるのが嫌で僕も引っ越したんだ。でも、週末だけはここに来て庭の手入れとかしてる」
「そうか、誰も住まないのは勿体無いな」
「そうなんだけど、一人では居たくなかったんだ。今夜は二階の僕の部屋で寝よう」
「一緒に?」
「別々が良いなら、客間に布団引くよ」
「一緒がいいに決まってるだろ、何のために来たと思ってんだ」
「何のために来たの?」
「・・・・・お前を抱くため」
「光輔・・・・・今夜は天国へ行けるかな?」
「任せろ」
「無理しなくていいよ」
「乙哉、お前俺のことどう思ってんだ?」
「どうって、好きだと思ってるよ」
「だったら、抱かれたいとか思うだろ」
「もちろん、光輔に抱かれて気持ちよくなりたいと思ってるよ」
「だから、俺がそうしてやるって言ってるんだろ」
「わかってる・・・・・でも、光輔と一緒に居るだけで幸せだから、SEXなしでもいいと思ってる」
「お前この前のホテルでの事気にしてるのか?俺だけ夢中になって悪かったって思ってる。だから、今夜こそ乙哉を満足させてやる」
「わかった」
乙哉は光輔を見てにっこり笑った。
その笑顔は光輔に無理するなと言っているようだ、光輔はこれまで何人もの相手をして来て、こんな思いをするとは思わなかった。
好きな人を満足させられないなんて・・・・・乙哉を好きすぎて、いざ始まると緊張すると同時に気持ち良すぎて我を忘れてしまう。
だが、それをいくら乙哉に言っても分かってもらえない。
乙哉を啼かせたい・・・・・乙哉が縋り付くほど何度も達かせてやりたい、もういいと言うまで抱き潰したい。
今夜こそ・・・・・そう心に決める光輔だった。
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