花を買う

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花を買う

朝食を済ませ、光輔の車で花の苗を買うために園芸店へ向かった、郊外にある大型のこの店には季節を先取りした花の苗が大量に置かれている。 土はもちろん肥料や薬剤、栄養剤、球根、種、園芸に必要なものはほぼこの店で揃う。 観葉植物のブースを見て、大型の鉢植えを見ながら苗物の場所へ行くと小さなポットに植えられた花たちが多数置かれていた。 「好きなの選んで、光輔の好きな花で庭を一杯にするから」 「俺の好きな花?どれだろう………こいつかな」 光輔が選んだのは《ベロニカ・オックスフォード》という名の紫の小さな花が群生して咲く花だった。 光輔なら派手な大きな花を選ぶと思っていた、次に選んだのもまた薄紫の《ネモフィラ》という花そして次に《イベリス・センペルヴィレンス》とう名の白い小花だった。 意外と小さくてかわいらしい花が好きなんだ、光輔は繊細で優しい性格なのかもしれないと思った。 そして僕も光輔の花と合わせるように《ハナニラ》と庭の隅に植える《クリスマスローズ》を購入した。 まとめて数株ずつを箱に入れて、肥料と薬剤も一緒に購入して帰宅した。 すぐに庭に運んで光輔にもゴム手袋を渡して、芝生の周囲の花壇に次々と植えていく。 光輔は始めてだと言いながら、手際よく丁寧に植えていた。 一通り植えた後はたっぷりと水をかける。 全部終わった頃にはお昼過ぎになっていた。 「光輔!お昼は庭で食べよう、倉庫にイスとテーブルが入ってるから出して」 「了解」 光輔が用意する間に冷凍のピザを焼いて、コーヒーを用意する。 熱々のピザを庭のテーブルに運んで、植えた花たちを見ながらランチを楽しむ。 「たまには外で食べるのもいいな」 「桜が咲いたらお花見しよう」 「おぉ~やろう!お花見の後はベッドで桜を見ながらやるか?」 「もう……光輔は情緒がないんだから………」 「嫌なのか?」 「そうじゃないけど、今言わなくても………」 「そうだ、ベッドの大きいやつ買おう。あのベッドじゃ危なくてオチオチできないだろ」 「でも………僕一人ならあれで十分だし」 「俺はこれから毎週末ここに来るつもりだけど、それでもか?」 「そうなんだ、毎週来るんだ」 「俺が毎週来ちゃ迷惑か?」 「そんなことないよ、嬉しい」 「だったらベッド買おうよ」 「うん、わかった買おう」 「だったら午後からは買い物だ、日常品とか食器とか………ゴムも用意しとくか?」 「光輔!」 光輔の提案で昼からはベッドと一緒に生活必需品まで購入することになった、まるでこれから同棲が始まるカップルのような気がする。 いつか光輔と一緒に住む日が来るのだろうか? きっとそんな日は来ないだろう………光輔の社会的な立場を考えると、いくらゲイを公言したと言っても、男と同棲なんて無理に決まっている。 淡い夢を見るのは止めよう………そう自分に言い聞かせながら、マグカップや歯ブラシを選んだ。 ベッドは光輔の希望でキングサイズを選んだ、二人寝てもまだ十分余裕がある。 あの部屋が全部ベッドで埋まりそう。
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