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仕返し
乙哉の話を聞いて無性に腹が立った。
昨日のあの男の顔が目に浮かぶ、乙哉をいたぶりながらその目には卑猥で淫靡な光があった。
あの社章を付けさせるわけにはいかない、あの社章は会社への誇りと仕事への尊厳を持つものだけに与えられるものだ。
我が社にあんな男は必要ない!
仕事がいくら優秀でも、人間的に欠落した奴は会社にとっても害になるだけ・・・・・そう、あいつは必要ないと決断した。
これはあくまで、個人的な感情ではない・・・・・と、自分に言い聞かせ男に伝えた。
「君は必要ない」
忙しい光輔にとって、週末乙哉の実家での3日間は癒しの時間だった。
一緒に眠り一緒に起き、朝も昼も夜も共に同じ食事を食べ、同じベッドで眠る。
それが1週間の活力だった、いつか週末だけではなくずっと一緒にいられたら・・・・・乙哉はどう思っているのだろう?
あの家で季節の花を植え、春には桜の咲く庭でお茶を飲み、豊かで心安らぐ時間を過ごし、乙哉に見送られて仕事へ向かう・・・・・乙哉とならそんな毎日が送れそうな気がした。
明日は金曜日、乙哉の手作りの食事を食べられる。
新しいベッドも届いた、あれならどんな体位にも対応出来るだろう。
そんな事を言ったら、また乙哉に怒られそうだ・・・・・それでも、思わずにおれない。
照れて怒る乙哉が可愛くて愛しい、これまでだれにも感じたことのない感情!
親も兄弟も知らない、愛情を与えられたことも与えた事も無かった。
今、乙哉に感じるこの感情が愛ならば、始めて生まれた愛情は乙哉へのもので、乙哉が与えてくれたものが始めての愛だった。
乙哉の過去も現在も全部まとめて愛してやる。
だから、俺の全てを愛してくれ。
お前がそばに居るだけで幸せだ、二度とその顔を涙で濡らす事がないように俺がお前を守ってやる。
だから・・・・・ずっとそばに居ろ!
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