自覚

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自覚

自分の気持ちを理解して欲しかった、パーティーに伴う意味と意義を分かった上で伴侶として出席して欲しい。 1日かけて乙哉を説得した、乙哉が自分のマイノリティを恥じている事を知っている。 過去の辛い体験から、自信をなくし自分自身を卑下してほしくない。 自信を持って、私と共に生きる事を選んだ己を誇って欲しかった。 他人がどう思おうと関係ないとは言え、誰の前でも自分達が愛し合っている事を隠して生きていくのは我慢がならない。 乙哉が納得した上でパーティーへ出席する事こそが意味があると力説した。 乙哉がやっと理解してくれた、私の気持ちを喜んで受け入れてくれた。 あのタキシードが無駄にならなくて良かった。 タキシードを着た乙哉を観衆に晒すのは本意ではないが、顕示欲はある。 どんなモデルより乙哉の溢れる魅力は劣る事はない。 そんな乙哉を誇りたいし見せびらかしたい、憧れと羨望の目で見て欲しい。 光輔のささやかな顕示欲だった。 出席すると覚悟を決めてからの乙哉の反応は早かった、光輔の伴侶として並び立つために、先ずは外見からと美容院で髪を整えた。 長めの髪を短くカットし、緩くウェーブのかかった前髪を遊ばせる。 美容室から帰った乙哉を見た光輔はその魅力に驚愕した。 気品と優美さに溢れ、他を圧倒するオーラすら感じられた。 同伴すると決めたとは言え、他人の目に乙哉がどう映るのか心配になってくる。 下手に注目されては藪蛇になりそうだ、誰かの目に留まり気持ちを惹きつけることになったら・・・・・乙哉を取られてしまうかもしれない。 自分以外を好きにならないとは言えない、初心で純粋な乙哉は他の男に対する免疫に欠けている。 嫌な体験から人を避け世俗とかけ離れた生活をして来た乙哉が自分以外の男に興味を惹かれたら・・・・・どう食い止めればいいのかわからない。 やっぱり乙哉は外に出すべきではない・・・・・今更そう思う光輔だった。
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