とらと言う名の男

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とらと言う名の男

愛澤大牙(あいさわたいが)通称「とら」は、自分でデザインした服は完成まで全て自分でしていると言う。 光輔とは二年ほど前に新規事業の為に訪れたイタリアで知り合い、お互いゲイであることがわかって仲良くなり、帰国してからも折りに触れ連絡を取り合っていたと言った。 今回の新規事業のモデルエージェンシー立ち上げの際も、とらの助言と協力が役に立ったと話してくれた。 同じゲイなら、彼と付き合っていたのだろうか? 気心も知れ気さくに話している様子を見ると、過去に付き合っていた相手と別れた後も友達として仲良くしている、と言うパターンかも知れない・・・・・ だったら、自分を恋人として紹介するのも頷ける・・・・・ 彼はハーフなのかクォーターなのか分からないが、日本人には無い雰囲気を持っていた。 髪の色も薄いブラウンでふわふわして、目もグリーンっぽく、勿論スタイルも良く目鼻立ちもマネキンの様な文句のつけようの無い顔立ちだった。 しかも、物腰も柔らかで優しい・・・・・光輔が好きになるのも頷ける。 どんなに彼がお洒落に変身させてくれても、自信を持って彼のデザインした服を着るのは無理だ。 気持ちがどんどん落ち込んで、変身して二階堂社長を驚かすなんて気も無くなってしまった。 早く帰りたいとさえ思っていた。 光輔はなぜ彼と別れたのだろう、別れた理由が知りたかった。 落ち込む乙哉をよそに、光輔はとらと楽しそうに乙哉に似合う服を選んでいる・・・・・光輔が一番楽しそうじゃないか・・・・・乙哉は二人を見ながらそう思っていた。
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