陶芸家

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陶芸家

光輔と知り合う前は1年の殆どを山の窯場で過ごした。 作品の構想が湧くと居てもたってもいられず、山へ向かう。 誰に遠慮することもなく、行きたいときに行き居たいだけ山に居た。 気を使う事もなく、無理に話す必要もなく気楽な毎日を過ごした。 だが光輔と知り合って、山へ行く気になれなかった………新しい作品の構想もまとまったのにどうしても決心できない。 光輔と離れたくなかった。 だがそんなことは言っていられない………作品を作りたいと思う気持ちと、光輔と離れたくないと言う思いが交差する。 そんな時、光輔の海外出張の話が出た。 2週間のミラノへの出張、モデルエージェンシーの二階堂社長とモデル数名を伴って初のショーへの参加と現地事務所の視察だった。 「乙哉、しばらく会えないけど………大丈夫か?」 「大丈夫、僕も山へ行ってくる」 「山?一人で?」 「勿論、一人に決まってるだろ、これまでだっていつも一人で行ってたんだし」 「でもな………メールも電話も出来ないんだよな」 「そうだけど、光輔も2週間出張だからちょうどよかったよ」 「乙哉はどれくらいで帰って来る?」 「いつもは一か月くらいかな」 「俺の出張より長いのか」 「仕方ないだろ、光輔も仕事だし俺は陶芸家なんだから作品作らなきゃ」 「乙哉………俺も山に着いて行こうかな」 「無茶言うな、光輔はミラノ俺は山の窯場………」 「ミラノより乙哉のいる山がいい………」 さんざんごねた挙句光輔はミラノへ旅だった。 二階堂社長のそばには綺麗な女性・・・・・それは大牙さんだった。 同行するモデルさん達と同じくらい綺麗でスタイルがいい。 光輔が仲を取り持ったとはいえ、今回の出張にも同行することになって、はなはだ機嫌が悪い。 大牙さんは社長の恋人として同行するわけではなく、今回のファッションショーの衣装を見に行くと言う大義名分があった。 光輔にもそのことは十分わかっている、それでも二人が目の前で仲良くしているのが気に入らないらしい。 光輔を見送って、乙哉も直ぐに山へ向かった。
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