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愛の証
光輔は壺の前から一歩も動かず見つめていた。
自分の描いたメッセージに気がついたのだろうか?
俄かに心臓が激しく鼓動し始めた、あの文字に隠された意味・・・・・輝く金色で描かれた「光」の文字!
光輔に贈った愛の証!
たとえ光輔があの文字に気付かなかったとしても、あの黒い壺は光輔への心を込めた贈り物のつもりで製作した。
生涯ただ一人の存在として、永遠に残すために渾身の想いを込めた。
いつかあの壺を光輔の側に置いて欲しい、それが乙哉の願いだった。
光輔の側に立つ。
「どう?」
「乙哉!お前・・・・・俺の為に作ったのか?」
「どうしてそう思う?」
「・・・・・お前の気持ちが、描かれている」
「そう?」
光輔は気が付いていた、乙哉の深い愛が込められたメッセージ!
光り輝く「光」の文字、桜の花びらにひっそりと描かれたその文字の表す意味・・・・・
「乙哉!俺からのプレゼントを受け取ってくれるか?」
そう言うと光輔は乙哉の前に片膝を付いた。
まるで、恋人にプロポーズする騎士のように・・・・・
ポケットから出したのは、黒い小さな箱・・・・・おもむろに開けたその中には、金色に輝く指輪があった。
「一生お前を大切にする、健やかなる時も 病める時も喜びの時も 悲しみの時も、富める時も 貧しい時もこれを愛し 敬い 慰め合い 、共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓います。
乙哉!受け取ってくれるか?」
それは紛れもないプロポーズの言葉・・・・・乙哉は驚きと感動に震えた。
「光輔・・・・・ありがとう!」
乙哉は光輔の前に膝まづき、左手を出す。
光輔が乙哉の薬指に指輪を着けた、そして乙哉も光輔の左手の薬指に同じ指輪を着けた。
お互いの薬指に輝く指輪。
「光輔!この指輪いつ用意してた?」
「ミラノで作らせたんだ、離れてみてお前が俺にとってどれだけ大切な存在かがわかった、だからどうしても証になるものをプレゼントしたかった。お前も同じ気持ちだったんだな」
「わかった?」
「すぐ、わかった!乙哉ありがとう!感動したよ」
気持ちを表す言葉には限りがある、どんなに言葉を尽くしても伝えきれない思いがある事を人は知っている。
だからこそその証を欲しがる。
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