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桜の下で
芝生の上にブルーのシートを敷いた、いくらなんでも工事現場じゃあるまいし、こんな味気ないシートじゃせっかくのお花見が台無しだ!
部屋に戻り押し入れの中を引っ掻き回す・・・・・昔母が使っていた紅い毛氈を探した。
奥の方に綺麗に畳まれ、袋に入った毛氈を見つけた。
この上に座った光輔は・・・・・素敵なお内裏様に見えそうだ。
目を閉じて「東帯衣装」を身に付けた光輔を想像する。
その横には可愛いお雛様しか似合わない・・・・・自分が横に座っても、絵にならないと思うと気持ちは落ち込んだ。
ただの想像なのに・・・・・
ブルーシートの上に紅い毛氈を敷くと一気に優雅な雰囲気が醸しだされた。
お弁当を置いて、光輔を呼ぶ。
「光輔!出て来て」
「用意できた?」
「うん、どう?」
「へー凄いな、雅な感じ」
「雅?そんな単語久しぶりに聞いた」
「乙哉が着物でも着たらいいんじゃないか?」
「光輔こそ・・・・・そうだ、今度花火大会行こう」
「なんだそれ?」
「花火大会だよ、浴衣着てさ」
「浴衣も着たことないし、花火大会も行っ事はない」
「光輔って、今までどう生きて来たの?」
「普通だけど・・・・・」
「光輔の日常に俺が色を付けてやるよ」
「俺のこれまでは無色だったのか?」
「俺から見たらそんな感じ」
「そうかもしれないな」
光輔はこれまでどう過ごして来たのだろう?
春に桜を見ることもなく、夏に花火を見ることも浴衣を着て出掛けることも無かったのだろうか・・・・・
そんな光輔に楽しい事が沢山あることを実感してほしい。
勿論、俺と一緒に・・・・・
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