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桜の花びら
わずかな風で散った花びらが僕達二人に降り注ぐ。
光輔の髪に乗った桜の花びら・・・・・そっと指で摘んで両手で包んだ。
弁当を肴にビールとお茶を飲む!
光輔がおにぎりを手に取った、大きく口を開けてかぶりつく。
「光輔って、おにぎりが似合わないな」
「似合うとか似合わないとかあるか?」
「あるよ、光輔はやっぱりスーツを着てフレンチやイタリアンにワインかな」
「なんだそれ!俺は日本人なんだ、フレンチとかイタリアンなんてたまに食べるならまたしも、太るだけだろ」
「俺が普通の和食食べさせてやるから」
「乙哉・・・・・俺と一緒に住まないか?」
光輔は乙哉の顔を見つめてポツリと言った。
胸の奥に留めていた言葉が、思わず溢れ落ちたかのようだった。
「・・・・・光輔」
「嫌か?」
「そんな・・・・・俺は両親も居ないし、光輔と一緒に住んでもとやかく言われる事はないけど、光輔は違うだろ?」
「俺だって文句の言う奴なんて誰も居ないぞ」
「でも・・・・・立場とか・・・・・」
「俺が誰と住んでるかなんて、そんな事で駄目になるような仕事はして無い」
「光輔・・・・・俺・・・・・一緒に居たい」
「だったら、一緒に暮らそう」
「うん」
「何処がいい?俺はできればここがいいと思ってるけど、お前は?」
「ここ?ここで良いの?」
「あぁ、ここが良い!ここで毎年お前と桜が見たい」
「光輔・・・・・ありがとう」
光輔がシートにゴロリと横になった、僕の膝に頭を乗せた光輔が下から僕の顔を見ている。
光輔の髪を撫でながら、嬉しさと幸せで瞼が熱をもち溢れた涙が頬を伝って、光輔の顔に落ちた。
光輔が手を伸ばし僕の頭を引き寄せた、合わせた唇に涙が混じって、少ししょっぱいキスをした。
光輔の髪を撫で続ける、うっとりと光輔が目を閉じた。
静かに穏やかに時が過ぎていく。
僕達二人を祝福する様に桜が風に舞った。
これから先ずっとこの場所で春を迎え、桜の下で花見をする。
季節の花を植え、芝生の庭で椅子に座ってお茶を飲む。
朝食を済ませ、仕事に行く光輔を玄関で見送る。
そんな毎日が本当に実現する。
夢にまで見た光輔との暮らし・・・・・
光輔が仕事に専念できる様に心穏やかに寄り添って生きていきたい。
生まれて初めて心が通い合い、愛し合う喜びを教えてくれた光輔!
光輔の穏やかな顔にそっとキスをした。
完
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