自分のセクシャリティ

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自分のセクシャリティ

光輔がゲイだと認識したのは、中学に入ってすぐだった。 女子の誘いに何のときめきもなく、むしろ先輩が肩に手をかけただけでドキドキとした。 同じクラスの男子がふざけて抱きつくと胸の鼓動は激しくなり嬉しい気持ちになった。 男の子が当然のように話す女子の身体の事にも、全く興味が持てず、むしろ体育教師の胸や尻が気になった。 たとえ自分がゲイだとしても、嘆くような親はなく、育てた祖父も大学入学後すぐに亡くなった。 両親はもともと自分を育てる気もなく、結婚も形だけのものだった、男子を生むことだけが条件でそれさえ終われば、任務完了とばかりに母とは名ばかりの女は好きな男のもとへ出奔した。 父はと言えばヤクザの情婦に手を出した挙句に行方知れずになっている。 唯一残った祖父は後継者としての知性と教養、そして王となるべく帝王学だけを叩き込んだ。 そこにあるのは血のつながりだけで、暖かな肉親の情も優しい抱擁もなかった。 中学や高校や大学では周りに沢山の友達がいた、だが友達とは名ばかりで、自分の背景だけが目当てだった。 ゲイだと知って身体を提供するように接してくる友達もいた。 結局、親友はおろか真の友達すらいなかった。 それからはあのバーで適当な相手を探し溜まった欲を発散するようになった。 ゲイを公言してからは、むしろ気楽に相手を見つける事ができた。 あの場所は乙哉のような真っ白な人間の来るところではなく、来てはいけない場所だと思っている。 あの夜あの場所で偶然会った乙哉………本人が気づいていないことをいいことに、まるで自分も真っ白な人間のふりを続けている。 沢山の男とsexをしてきた自分が清廉な乙哉に恋を打ち明けられず、もし拒絶の言葉を言われたら、もう二度と逢えなくなる。 それよりは、側に居続けるために親切で優しい年上の男を演じ続けるつもりでいた。 それなのに今夜のように妖艶に微笑まれたら………固く結んだ鎖が切れてしまいそうになる。 乙哉の気持ちが知りたかった、もし少しでも自分に好意を持っていてくれるなら………今日を限りに真っ白な兎になってみせる。 食事を終えて乙哉を自宅へと送り届けた、送り狼にも兎にもなれない自分は一体どうすればいいのだろう。
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